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 本日はちょっと変わったところでイーデン・フィルポッツの『ラベンダー・ドラゴン』を読んでみる。
 最近読み進めているムーミンの影響もあってか、少し古めのファンタジーを他にも読んでみたくなったというわけである。ただ、どうせ読むならと、ミステリファンにも馴染みの深いイーデン・フィルポッツの作品をチョイスしてみた。
 『赤毛のレドメイン家』や『闇からの声』等のミステリ作品で知られるフィルポッツだが、彼の創作の中心はむしろ歴史小説や田園を舞台にした小説である。本作『ラベンダー・ドラゴン』も実は余技に分類されるかもしれないが、それでもファンタジーは十作ほど残しているから、その辺のプロパーよりも書いているかも知れない。さすが英国文壇で長老と呼ばれただけのことはある。

 まずはストーリー。
 無知と貪欲と迷信があまねく世界を支配している暗黒時代のヨーロッパ。騎士道の習いとして、ジャスパー卿は従者ジョージを引き連れ、諸国遍歴の旅を続けていた。そんなあるとき辿り着いた村で、悪名高きドラゴンの噂を聞いたジャスパー卿。やっと騎士としての勇気を試すときがきたと、村人に見送られ、ドラゴンのいる地を目指す。
 ところが現れたドラゴンは意外にも教養に豊み、高潔な魂の持ち主だった……。

 ラベンダー・ドラゴン

 高潔な騎士道精神あふれる若者が主人公。知恵はいまひとつ回らないけれど、行動力はばつぐんという、実に典型的なキャラクターである。その主人公が同じく高潔ながら非常に経験豊富な年老いたドラゴンと出会うことで、人間とは何か、生きることとは何なのかを学んでいくという展開。
 こう書いてしまうとえらく退屈そうに思えるが(苦笑)、人をさらってゆくドラゴンが、実は理想のユートピアを建造するためであったり、指導者として人々を諭したりと、前半の展開はなかなか意表を突く。

 ただ、中盤以降はすっかり物語が落ち着いてしまい、ドラゴンが作った村で暮らす住民とドラゴンの議論や説教が大半を占めるようになると少々辛い。
 文章は平易なので読みにくくはないが、当時の思想や倫理観がすでに現代とマッチしていないこともあるし、そもそもキリスト教的な人生観や倫理観に興味がないことには、なかなか入っていくのは難しい。

 しかしながら"高潔な指導者としてのドラゴン"という存在は、今でこそ各種ファンタジーノベルや映画、ゲームでお目にかかることはあるけれど、作品が書かれた当時(1923年)にあってはけっこう新鮮なはず。こういった作品が後々につながっていったことは十分ありうる話だろう。ファンタジーやドラゴンが好きという方なら、読んでおく価値はある。

テーマ:幻想文学 - ジャンル:本・雑誌




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