Posted
on
ロン・アンダーウッド『トレマーズ』
低予算B級モンスター映画のなかでも比較的有名な作品(とはいえモンスター映画マニアの間だけでしょうが)なので、さすがに1作目は観ていたものの、2以降はパッとした評価でなかったため、これまでスルーしていた。
ところが最近になって、『トレマーズ ベストバリューDVDセット』なるものをショップでたまたま発見。どうやら今年になって発売されたものらしいが、シリーズ全四作が入っているのでこれは便利。2以降の評価はとりあえず聞かなかったことにして(笑)、この機会に最初から通して観てみることにした。
アメリカは西部に位置するネバダ州。人口僅か人口14人の町パーフェクションで、便利屋を営むバルとアールがいた。しかし、あまりにしがない毎日に嫌気がさし、遂に町を出ることにした。
ところが途中でぶち当たったのが、なぜか鉄塔の上で死んでいる町の住人。いったん死体を町へ運んでから、あらためて町を出ることにしたが、今度は工事現場で作業員が襲われたらしいことを発見。
犯人はどうやら地中を動き回っている謎のモンスターらしい。やがて地質学を学んでいる女子学生が加わり、モンスターが震動を感知していることも明らかになるが、既に奴は町の近くまで迫っていた……。

初めて観たのはもう二十年ほど前になると思うのだが、今観てもいやあ良くできている。身も蓋もない言い方をすると陸上版ジョーズであり、下手な科学考証や人間ドラマを一切抜きにして、ミミズの化け物みたいな奴=グラボイドと住民の死闘を、非常にシンプルに見せてくれる作品である。
モンスター映画の定石はある程度踏まえている。主人公たちの言葉をなかなか他人が信用してくれなかったり、逃げ道が閉ざされて脱出方法が限られてしまったり、グラボイドの設定を活かした倒し方を見せたりといった具合。
その一方で、これまでのモンスター映画にはあまりなかった試みも試しているわけで、これがあるから本作は確固たる地位を占めるようななったといえるだろう。即ち徹底的に明るいタッチの作品なのである。
まずは文字どおり画面が明るい。通常のモンスター映画やホラー映画は基本、夜や暗いシーンが多い。実は特撮の粗を隠す意味も大きいのだが、やはり人を怖がらせるにはまず雰囲気作りである。出るぞ出るぞといった煽りがなければ怖さも半減だが、本作はそこを思い切って逆に徹底的に明るい映像にこだわっている。夜のシーンはほとんどなし。正直、グラボイドもチープな感じは否めないのだが、それでも明るい太陽の下で登場させる。
もうひとつの明るさはテイストだ。要はライトなコメディタッチ。主人公二人の掛け合いに代表されるように、古き良き時代の青春コメディのノリでガンガン押してくるのである。怖さが半減されるのは制作者たちも承知の上だろう。そこをあえて馬鹿っぽいノリで正統派モンスター映画に仕立ててくるのがお見事。どうせおいらたちB級だもんねと開き直り、それが結果的にこれまでのモンスター映画の既成概念を打ち破ったといえる。
ちなみに主人公たちのやりとりは十分笑えるのだが、その存在感だけで楽しめるのがガンマニアの夫婦。こういう人たちってたいてい真っ先に餌食になったりもするのだが、本作ではかなりのキーマンとして活躍するのも楽しい。こういうツボの外し方というか、センスがいい映画でもあるのだ。
普通の映画ファンがわざわざ観るような代物ではないけれど(苦笑)、少なくとも退屈するようなことは絶対にない。
- 関連記事
-
-
マイケル・ドハティ『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 2019/06/08
-
マーク・フォースター『プーと大人になった僕』 2018/10/04
-
ジョーダン・ヴォート=ロバーツ『キングコング 髑髏島の巨神』 2018/08/07
-
スティーヴン・S・デナイト『パシフィック・リム:アップライジング』 2018/04/24
-
ライアン・ジョンソン『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』 2018/01/08
-
ドゥニ・ヴィルヌーヴ『ブレードランナー 2049』 2017/10/31
-
リドリー・スコット『エイリアン:コヴェナント』 2017/09/17
-
ビル・コンドン『美女と野獣』 2017/06/04
-
ジャスティン・カーゼル『アサシン クリード』 2017/03/04
-
スコット・デリクソン『ドクター・ストレンジ』 2017/02/05
-
ギャレス・エドワーズ『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』 2017/01/02
-
J・J・エイブラムス『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』 2016/01/03
-
佐藤信介『図書館戦争』 2015/12/19
-
クリス・コロンバス『ピクセル』 2015/09/22
-
コリン・トレボロウ『ジュラシック・ワールド』 2015/08/16
-
Comments
いや懐かしい!
学生の頃、○○洋画劇場で2回観たきりですが、かなり面白かった記憶があります。ウェポンマニアの夫婦との死闘はまさに名勝負(笑。だって死にそうなキャラだったから手に汗握ってしまいました)。たしか夫婦の自動車のナンバーも銃か何かの名称だった筈(←勘違いかも)。
あとジョン・カーペンター作品の常連のアジア系のおっさんが出ているのも個人的に高ポイントでした。
『~2』ががっかりするような出来だったので以降の作品はスルーしましたが、今後の感想のアップを楽しみにしております。勿論某東宝じゃない特撮映画コレクションも(笑)。
Posted at 23:30 on 10 01, 2014 by くさのま
serpent seaさん
>登場人物が長々と悩んだり、グズグズしてないのも見やすいですよね。
そうですね。ホラー映画やパニック映画にありがちなイライラを極力排除しているのも大きな特徴ですね。明るい作風もそうですが、爽快感を求めたホラー映画といってもいいかもしれません。
唯一、ティーンエイジャーの若者だけにはイラッときましたが(笑)。
Posted at 07:47 on 09 30, 2014 by sugata
いつも楽しく読ませてもらってます!
大好きな映画が取りあげられて嬉しいです。
色々ざっくりしてるわりに、モンスターの描写ひとつとっても
変な緑の汁とかじゃなくて血が流れたり、めっちゃ臭かったりと、
あまり予算をかけない方向で生物感を出すことに成功してると思います。
がんばれば人力で対処できるモンスターは見てて楽しいし、
登場人物が長々と悩んだり、グズグズしてないのも見やすいですよね。
Posted at 01:44 on 09 30, 2014 by serpent sea
くさのまさん
今ではカルト映画扱いですが、カルト映画と言うにはけっこう知られているし、しかも特撮マニアとかじゃなくてもそこそこ楽しめるというのが、この映画の最大の特徴なのかもしれません。
> 『~2』ががっかりするような出来だったので以降の作品はスルーしましたが、
そういう人は多いみたいですね。私はその噂だけで2すら観ていませんが(笑)、もちろんDVDを買ってしまったので、ぼちぼち感想はアップしていきます。
>某東宝じゃない特撮映画コレクションも(笑)
大映っすね(笑)。正直、昭和ガメラのいくつかはあらためて観たい気持ちがわかなくて困ってます(リアルタイムではほぼ観てますが)。ただ大魔神はそのうちレビューしたいなーとは思ってたので、まあ、こちらもぼちぼち進めていきます。期待せずにお待ちください。
Posted at 23:51 on 10 01, 2014 by sugata