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 中町信の『偽りの殺意』を読む。デビュー作を含む初期の三作品を収録した中短篇集である。刊行予定がネット上に上がったときは確か『疾走する殺意』だったが、改題されたようだ。例によって”〜の殺意”というタイトルでまとめているが、どうせ今となっては大した意味もないのだから、各版元はあらためて売り方を考えた方がいいと思うのだが……。
 それはともかく中身に移ろう。

 偽りの殺意

「偽りの群像」
 東京から来た教科書会社の営業マンが崖から転落死する事件が起こった。前日の夜、猿ヶ京温泉に同宿した女性と被害者を恨む男が疑われるが、二人にはどちらも強固なアリバイが……。
「急行しろやま」
 ある教科書会社の部長が急行しろやまから転落して死亡する。死体には首を絞めた跡があり、殺人事件として捜査されるが、まもなく被害者は会社の労働争議で組合員から恨みを買っていたことが明らかになり……。
「愛と死の映像」
 信越本線を走る急行越前から県教育事務所長が転落死する。遺体の後頭部には裂傷が見られ、他殺の線で捜査が進められたが、実は被害者は小中学校の人事異動に絡む汚職容疑で調べを受けていた男でもあった……。

 収録作は以上。中町信といえば今でこそ叙述トリックの名手として知られる存在になったが、ミステリを書くきっかけは鮎川哲也の諸作品を読んだことであり、初期の作品はその影響を色濃く受けたものが多かった。すなわちアリバイ崩しである。
 本書収録作もデビュー作の「偽りの群像」を初め、アリバイトリックがメインなのだが、これがまあなかなかの力作揃い。アリバイトリックものというとどうしても地味にはなりがちだし、若干、古い感じは否めないが、基本に忠実というか、かっちり核の部分を固めているのがポイントアップ。
 特に良かったのは「愛と死の映像」。これまで単行本未収録だったこともあるが、その後、話題となった諸作品のエッセンスが感じられるなど、内容的な満足度も高い。

 気になったのは設定が似すぎていることか。もう少しいろいろな世界を取材して書けよといいたくなるぐらい幅が狭い(苦笑)。
 デビュー間もない頃だからまだ引き出しが少なかったとは思うし、そもそも編者がまとめたものだからあまり著者に責任はないかとも思うのだが、ちょっと残念なところではある。

 とりあえずそんな欠点も踏まえつつも、ファンであれば間違いなく押さえておきたい一冊。同じく光文社から出た前作の『暗闇の殺意』よりも楽しめます。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





Ksbcさん

ま、そんなところですよね。
ところで中町信は意外に古本が入手しやすいのでけっこう未読をためているんですが、短編集は古いものにもないので、こういう企画は続けてほしいですね。
【2014/11/10 23:24】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

こんにちは。
ここのところ読んでないと書きましたが、これは読みました。
もろもろ同感でございます。とくに、設定が似すぎてページを戻ったりしてしまいました。
私も「愛と死の映像」がいいんじゃないかと思っております。

ぼちぼち読んでいきます。
【2014/11/10 17:14】 URL | Ksbc #-[ 編集]















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