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 英国四大女流ミステリ作家の一人、マージェリー・アリンガムの『窓辺の老人 キャンピオン氏の事件簿 I』を読む。
 まあ今どき英国四大女流ミステリ作家と言われても、ミステリファンですらけっこう読んでない人は多いんじゃないか。クリスティはともかくとしてもセイヤーズはあやしいものだし、ましてやマーシュやアリンガムに至っては。
 とはいえ海外クラシックミステリファンにとっては、これほど嬉しい贈り物はない。近年になってぼちぼち翻訳が進んでいる(遅々としたものだが)アリンガムだが、短編集はこれが初。しかもキャンピオンものである。加えて今後も年代順に編集された続巻も予定されているというから喜ばしいかぎりだ。
 とりあえず収録作品。

The Border-Line Case「ボーダーライン事件」
The Case of the Old Man in the Window「窓辺の老人」
The Case of the Pro and the Con「懐かしの我が家」
The Case of the Question Mark「怪盗〈疑問符〉」
The Case of the Widow「未亡人」
The Meaning of the Act「行動の意味」
The Dog Day「犬の日」
My Friend Mr. Campion「我が友、キャンピオン氏」(エッセイ)

 窓辺の老人

 我が国では紹介される順番がバラバラすぎたため、いまひとつ全貌が掴みにくかったアリンガム。だが今ではユーモアで味付けされた冒険小説風の初期、心理描写に重きを置いた本格探偵小説中心の中期、サスペンス風味の強い後期というようなイメージで理解している(ザックリすぎですが)。
 今回、初期短篇をまとめて読んだことで思ったのは、そういった作風の移り変わりというものはあったのだろうが、基本的にアリンガムの作風がもともとバラエティに富んでおり、それこそがアリンガムの作家としての重要な資質だったのかも、ということ。プロットや方向性は決めているのだろうが、いざそれを物語に落とすときには筆の赴くままに、という感じではなかったのだろうか。
 本書に収録されている作品は比較的初期のものばかりなのだが、ミステリをベースとしながらも味つけは冒険小説風ありユーモアあり奇妙な味ありと、これまたバラエティに富んでいる。この匙加減は考えてやっているというわけではなく、それこそアリンガムのセンスありきだった気がする。いや、センスもそうだが、読者へ娯楽を提供するという意識が、実は人一倍強かったのかも知れない。
 まあ、管理人の勝手な想像だけれども。

 というわけで物語の設定や味つけの面白さが、管理人的には一番気に入ったところではある。コレという強烈な作品はないのでやや物足りなさがないわけではないが、基本的には楽しく読むことができた。
 比較的知られている「ボーダーライン事件」はやはり押さえておきたい一作だが、「窓辺の老人」、「懐かしの我が家」、「犬の日」あたりも名探偵キャンピオンの役どころも含めて楽しめるだろう。

 そういえばキャンピオン氏の嫌みのない好青年ぶりは、名探偵としては逆に異色すぎて笑えた。この時代の名探偵で、ここまで知り合いや周囲に気配りができて世話焼きも珍しい。
 それだけにカバーイラストのキャンピオン氏(だよね?)は陰気すぎていかんな。コミック風にするのも雰囲気が合わないし、そこだけが本書の残念なところだ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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