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 今年の各種年末ベストテンを見ると当然ながらいくつか気になるものもあり、とりあえずダニエル・フリードマンの『もう年はとれない』を読んでみる。八十七歳の元刑事を主人公にした異色のハードボイルドである。

 元メンフィス署の殺人課刑事バック・シャッツ。伝説の名刑事も遠い昔、今では健康状態が何より重要な御年八十七歳である。
 そんな彼のもとに第二次大戦時の戦友が危篤状態となり、シャッツを呼んでいるとの連絡が入る。しぶしぶ会いにいったシャッツだが、その戦友からシャッツがかつて捕虜収容所で拷問を受けたナチスの将校が生きていると告白される。しかもその将校が金の延べ棒を持っているという話まで持ち上がり、にわかにシャッツの周囲が騒がしく……。

 もう年はとれない

 まあ、これは言うまでもなく設定の勝利だろう。エド・ゴーマンの『夜がまた来る』とかL・A・モースの『オールド・ディック』とか、老人の主人公という設定そのものはそれほど珍しいわけではない。本作ではそういう先輩方の成功例を踏まえつつ、より極端に劇画化したイメージといえる。
 もちろん奇抜な設定だけでは通用しないことも事実。本作ではやや粗っぽいけれど意外性も含めて何とか着地成功したプロット、活きのいい会話やテンポのいいストーリー展開も魅力であり、トータルバランスも悪くない。
 作者の意識には老人問題などもあるだろうが、まずは良くも悪くもエンタメ志行が強い作品に仕上がっており、そのレベルで楽しむのがいいだろう。

 読みどころは当然ながらバック・シャッツの活躍である。
 活躍と入っても今ではパンチ一つ満足に繰り出せないし、記憶力も相当危うくなっている。そんなシャッツが若い頃のように減らず口をたたきながら、ときには老人であることを逆手にとって、調査を進めていく。この痛快さが最大の魅力なのだが、だからといって決して皆が賞賛するようなヒーローではなく、あくまで"くそじじい"の範疇だから楽しい。作者の匙加減が光るところだろう。
 ただ、上でエンタメ志向が強いとも書いたとおり、老人を主人公にした割には若干浅い感じは否めない。そういう物足りなさが、シリーズ化される中でどう変化していくか興味あるところである。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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