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 新年明けましておめでとうございます。
 今年も例によって寝正月。近場で初詣を済ませ、あとはおせち食べて酒を飲んで本を読んだりTVやDVDを見たりミステリの資料整理をしたり。一年で唯一ダラダラと過ごせる時期なので、これはこれで大事にしたい時間である。
 何はともあれ本年も『探偵小説三昧』をどうぞよろしくお願いいたします。


 さて今年一冊目の読了本はアントニー・バークリーの『服用禁止』。しばらく休んでいた原書房のヴィンテージ・ミステリが昨年復活したのはまだ記憶に新しいところだが、その復活第一弾が本書。

 こんな話。
 語り手は田舎で果樹園を営む男、ダグラス・シーウェル。聡明な妻フランシスとともに暮らし、近所に住む富豪の元電気技師ジョン・ウォーターハウスとその妻アンジェラ、医師のグレンとその妹ローナらと親しくつきあっていた。
 ところが、ジョンがあるとき体調を崩し、そのまま数日後に急死するという事件が起こる。グレンは病死と診断したが、村に駆けつけたジョンの弟シリルは納得がいかず、これが毒殺であると訴える。やがて遺体からは砒素が検出され……。

 服用禁止

 いつものユーモアはやや抑えられているが、バークリーらしさにあふれた一品。探偵小説の可能性に挑戦し続けた作家というイメージが強いが、本作でもそのチャレンジ精神は随所に発揮されている。
 例えば粗筋だけ見ると本作はあくまでシンプルでオーソドックスな本格探偵小説。あえて"読者への挑戦”まで放り込んでいるぐらいだが、この時点で逆に十分胡散臭い(笑)。まあ、それは置いておいても、各所で見られるオフビートな展開というか、ひねくれたプロットに要注目。
 それも劇的な形ではなく、読者の予想を読んで、それを半歩分ぐらいだけ外すのが巧い。この半歩外されたことによるモヤモヤした感じが面白さにつながり、バークリー最大の魅力となるのである。

 また、それを支える人物描写の上手さも毎度のことながらお見事。単に描写が上手いだけではなく、ストーリーの展開に合わせて、登場人物の本当の姿を少しずつ明らかにするこの細やかさ。
 しかも登場人物のイメージが変わることで、また違う真実が見えてくるわけで、それが最終的に謎解きでの多重解決の披露にもつながるのはさすがのひと言である。

 そしてとっておきがラスト、事件の決着のつけ方であろう。これは正直本筋には関係ない部分ともいえるのだが、探偵小説というジャンルにとっては非常に強烈な皮肉というかアンチテーゼになっている。
 先に挙げた"読者への挑戦”も結局そのための布石であり、本格探偵小説の結構をきちんと踏まえながらその存在を揶揄する、本作はそんな不思議なミステリとして成立していることがわかるのである。

 ただ、いかんせん話が地味なのが惜しい。表面的に読んでも悪くないが、やはりそれだけでは面白さも半減だろう。
 本書を堪能するなら、やはりバークリーの有名作品や黄金期のミステリはある程度先に消化しておいたほうが、作者の意図するところがより理解できて楽しめるのではないだろうか。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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