- Date: Sun 11 01 2015
- Category: 映画・DVD 原作:アガサ・クリスティ
- Community: テーマ "ミステリー・サスペンス" ジャンル "映画"
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ビリー・ワイルダー『情婦』
本日は三谷幸喜版の『オリエント急行殺人事件』をやっていたのだが、外出のためとりあえず録画で済ます。面白ければ後日感想をまとめてみよう。
クリスティつながりというわけではないが今週は読書が進んでいないので、ひとまずDVDで観た映画『情婦』の感想など。
こんなサイトに来ている方なら今更『情婦』については言うまでもないだろうが、本作はアガサ・クリスティ原作『検察側の証人』を、巨匠ビリー・ワイルダーが1958年に映画化したもの。原作のプロットを生かしつつも、登場人物にかかるドラマの膨らませ方など、映画ならではの魅力も加わり、ミステリ映画の古典として名高い作品である。
こんな話。舞台は1952年のロンドン。老弁護士ウィルフリッド卿が口うるさい看護婦同伴で退院を果たしたその日、金持ちの未亡人殺害の疑いをかけられたレナードを連れて事務弁護士メイヒューが現れた。アリバイの証明者はレナードの妻しかおらず、状況は極めて不利だという。程なくして警察に逮捕されるレナード。ウィルフリッドたちはレナードの妻クリスチーネと会見するが、彼女の態度は夫を信じていないかのようであった。
やがて裁判が始まり、検察側と弁護側の丁々発止のやり取りが進む。そんな中、なんと検察側の証人としてクリスチーネが現れた……。

さて、ン十年ぶりに観た『情婦』だが、やはりこの作品は抜群にいい。
言ってみればコンパクトにまとめられた法廷ものだが、プロットが実に綿密に練られており、まったく無駄がない。ワイルダーらしいコミカルな部分も少なくないのだが、それすら全体のサスペンスや感動を最大限に活かせるよう、周到に計算されている印象である。
もちろんクリスティの原作ありきではあるけれども、法廷での検察側と弁護側の駆け引きひとつひとつから、最後の十分間の怒涛のどんでん返しに至るまで、ミステリ映画としてはこれ以上望むべきこともないほどだ。
俳優陣も見事。まずは何と言ってもクリスチーネを演じるマレーネ・ディートリッヒ。彼女はこのとき五十代後半のはずだが、この気高さと若々しさはどうだ。彼女の存在がなかったら、この映画の評価はまた変わったものになっていたかもしれない。
老弁護士を演じるチャールズ・ロートン、付き添う看護婦役のエルザ・ランチェスター(ロートンとエルザは実の夫婦だったりする)も素晴らしい。この二人の掛け合いが一服の清涼剤になっていると同時に、場面転換にも一役買っている。本来なら後味の悪いはずの真相が、この二人によって希望を抱かせるラストへと変化するのも非常にうまい手だ。
本当ならこの映画の伏線とかいろいろ書いてみたいのだが、やりすぎると興を削ぐので本日はこの辺で。
ひとつだけ言えるのは、本作がミステリ映画史に燦然と輝く傑作であるということ。まだの人はとりあえず観ておく方向で。
クリスティつながりというわけではないが今週は読書が進んでいないので、ひとまずDVDで観た映画『情婦』の感想など。
こんなサイトに来ている方なら今更『情婦』については言うまでもないだろうが、本作はアガサ・クリスティ原作『検察側の証人』を、巨匠ビリー・ワイルダーが1958年に映画化したもの。原作のプロットを生かしつつも、登場人物にかかるドラマの膨らませ方など、映画ならではの魅力も加わり、ミステリ映画の古典として名高い作品である。
こんな話。舞台は1952年のロンドン。老弁護士ウィルフリッド卿が口うるさい看護婦同伴で退院を果たしたその日、金持ちの未亡人殺害の疑いをかけられたレナードを連れて事務弁護士メイヒューが現れた。アリバイの証明者はレナードの妻しかおらず、状況は極めて不利だという。程なくして警察に逮捕されるレナード。ウィルフリッドたちはレナードの妻クリスチーネと会見するが、彼女の態度は夫を信じていないかのようであった。
やがて裁判が始まり、検察側と弁護側の丁々発止のやり取りが進む。そんな中、なんと検察側の証人としてクリスチーネが現れた……。

さて、ン十年ぶりに観た『情婦』だが、やはりこの作品は抜群にいい。
言ってみればコンパクトにまとめられた法廷ものだが、プロットが実に綿密に練られており、まったく無駄がない。ワイルダーらしいコミカルな部分も少なくないのだが、それすら全体のサスペンスや感動を最大限に活かせるよう、周到に計算されている印象である。
もちろんクリスティの原作ありきではあるけれども、法廷での検察側と弁護側の駆け引きひとつひとつから、最後の十分間の怒涛のどんでん返しに至るまで、ミステリ映画としてはこれ以上望むべきこともないほどだ。
俳優陣も見事。まずは何と言ってもクリスチーネを演じるマレーネ・ディートリッヒ。彼女はこのとき五十代後半のはずだが、この気高さと若々しさはどうだ。彼女の存在がなかったら、この映画の評価はまた変わったものになっていたかもしれない。
老弁護士を演じるチャールズ・ロートン、付き添う看護婦役のエルザ・ランチェスター(ロートンとエルザは実の夫婦だったりする)も素晴らしい。この二人の掛け合いが一服の清涼剤になっていると同時に、場面転換にも一役買っている。本来なら後味の悪いはずの真相が、この二人によって希望を抱かせるラストへと変化するのも非常にうまい手だ。
本当ならこの映画の伏線とかいろいろ書いてみたいのだが、やりすぎると興を削ぐので本日はこの辺で。
ひとつだけ言えるのは、本作がミステリ映画史に燦然と輝く傑作であるということ。まだの人はとりあえず観ておく方向で。
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こちらこそ今年もよろしくお願いします。
>本当にこの作品が予備知識なく観れたのは
幸せだったと思います。
古典作品はいろんなところでネタバレにあう機会がありますからね。映画でも小説でもミステリの一般教養は早めにクリアしておくに限ります。
それに新しい作品に接するときも、古典を知っていた方がより楽しめると思いますしね。