ADMIN TITLE LIST
 ローレンス・ブロックの『殺し屋ケラーの帰郷』を読む。
 殺し屋という稼業でありながら鋭い殺気や暗い陰などは微塵も感じさせず、むしろ飄々としたキャラクターが味わい深い殺し屋ケラーを主人公としたシリーズの第四弾。今回は連作短編集というスタイルをとっている。
 収録作は以下のとおり。

Keller in Dallas「ケラー・イン・ダラス」
Keller’s Homecoming「ケラーの帰郷」
Keller at Sea「海辺のケラー」
Keller’s Sideline「ケラーの副業」
Keller’s Obligation「ケラーの義務」

 殺し屋ケラーの帰郷

 前作ではとうとうケラーが殺し屋を引退し、これでシリーズ終了かとも思ったのだがあに図らんや。 
 今や良き夫・父として生きるケラーだが、殺し屋を引退したあとに始めた事業はうまくいかず、あわれ失業状態に。すぐに金銭的に困るわけではないが、これでは一家の主として居心地がよろしくない。
 そんな折り、久しぶりにかかってきたドットからの電話に反応し、殺しの依頼を受けてしまう。だがブランクは大きく、プライベートと殺し屋の両立も気になって……という展開。

 殺し屋としての活躍はもはや付け足しである。読みどころは何といってもケラーの心情やプライベートの移り変わり。
 殺し屋という職業に対して悩むケラー。だが人として倫理的に悩むのではない。体力や勘の衰えなど、まるで自身がスポーツ選手か何かのように悩むのである。
 "殺し屋"という非現実的な部分と日常という現実との垣根がまったくなく、まるで普通の小説を読んでいるかのように、実に共感をもって読めるから面白い。 

 ケラーとその他登場人物たちとの会話も相変わらず楽しい。仕事を発注するドット、妻となったジュリアとの軽妙なやりとりはもちろん、切手仲間たちとの蘊蓄満載のオタク話も心地よい。
 この語りの巧さはマット・スカダー・シリーズでもお馴染みだが、硬軟の差はあれども何気ないやりとりから人生の真理を感じさせる問答は共通であり、ブロックの真骨頂だ。

 なお、短編集とはいえ、あちこちつまみ食いという読み方はおすすめできない。ケラーの内面の変化を味わうには、やなり最初から順番に読んだ方がより楽しめるだろう。




















管理者にだけ表示を許可する



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2017 探偵小説三昧, All rights reserved.
ネット小説