- Date: Sun 18 01 2015
- Category: 映画・DVD 原作:アガサ・クリスティ
- Community: テーマ "ミステリー・サスペンス" ジャンル "映画"
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三谷幸喜版『オリエント急行殺人事件』
録画してあった三谷幸喜版『オリエント急行殺人事件』を一週間遅れで消化。
ネット上では賛否両論ありすぎて結局世評がどうかよくわからないのだけれど、管理人としてはテレビのミステリドラマとしては十分楽しめた。
以下、感想となるが、極力注意はするけれども、どうしても構成上ネタバレを含む可能性があるため、『オリエント急行殺人事件』について未読・未見の方はご容赦ください。
本作の肝は何といっても第一夜と第二夜の二部構成にしたところだろう。
予備知識のない時点では単に原作を前編後編にしたのかなと思っていたのだが、蓋を開ければこれがなんと原作に沿って作られた第一夜、そして犯行の裏側を犯人側から描いた第二夜という二段構え。当然、第二夜の方は三谷幸喜完全オリジナルとなるわけで、もともと豪華キャストを配しているドラマだけに、その活躍を倍楽しめる仕組みはなかなかうまいやり方と言えるだろう。
第一夜に関しては、原作はもちろん映画版をかなり意識した作りで、映画で見たような構図があちらこちらで再現されているのが楽しい。シナリオについてもかなり映画版を踏襲しており、クリスティファンからすると悪くないのだが、三谷ファンにはさてどうだったのだろう。黄金期の本格ミステリとしてみれば中盤の聞き込みシーンなどはけっこうな見どころなのだが、三谷ファンにはやや冗長で退屈に思われた可能性もあるわけで。
とはいえ真相はミステリファンならずとも驚きの内容だから、少なくとも第一夜に関しては、三谷幸喜もそれほど無茶はしなくて済んだというところだろう。
問題はオリジナルの第二夜か。まあ、犯行の裏側を描くといっても、すでに結末が決まっているわけで、料理できる範囲は限られている。おそらく脚本の制限もいろいろとあるだろうし、無い物ねだりの気もするのだが、やはり三谷脚本にしては意外にまっとうというか大人しめというか。
三谷幸喜が本当にやりたかったのはこちらだろうし、もう少し弾けても良かったのではないかというのが正直なところだ。ただし、決してつまらないわけではなく、こちらも普通には楽しめた。共犯者が増えていく件などはけっこうな見せ場であろう。
ただ、シナリオも要注目ではあったのだが、本作で一番の話題になっていたのはキャストである。特に野村萬斎が演じる勝呂武尊(すぐろたける)。
あまりに独特で過剰な演技に賛否両論だったが、もともとポアロ自体がそういう個性的なキャラクターとしてクリスティに創造されたのであり、映画版でもそれを踏襲している。だから今更、野村萬斎が非難されるのは筋違いだと思うのだが、まあ、予備知識なしで客観的に見れば、確かにあのキャラ造形はすぐに受け入れられんよなぁ(笑)。
むしろ管理人などは、若い役者さんとベテランの役者さんの力量に差がありすぎて、そちらを見ている方がやや辛かった(苦笑)。
ともあれこの手のドラマには常に最悪を予想してしまうので、今回は比較的楽しめたのが嬉しい誤算。ミステリ好きを公言している三谷幸喜だけに、従来のクリスティファンに相当気を配りつつ、可能な範囲で挑戦しているのはすごく伝わってきた。
これならもう一本、何か別のミステリをやってみても良いのではないかな。
ネット上では賛否両論ありすぎて結局世評がどうかよくわからないのだけれど、管理人としてはテレビのミステリドラマとしては十分楽しめた。
以下、感想となるが、極力注意はするけれども、どうしても構成上ネタバレを含む可能性があるため、『オリエント急行殺人事件』について未読・未見の方はご容赦ください。
本作の肝は何といっても第一夜と第二夜の二部構成にしたところだろう。
予備知識のない時点では単に原作を前編後編にしたのかなと思っていたのだが、蓋を開ければこれがなんと原作に沿って作られた第一夜、そして犯行の裏側を犯人側から描いた第二夜という二段構え。当然、第二夜の方は三谷幸喜完全オリジナルとなるわけで、もともと豪華キャストを配しているドラマだけに、その活躍を倍楽しめる仕組みはなかなかうまいやり方と言えるだろう。
第一夜に関しては、原作はもちろん映画版をかなり意識した作りで、映画で見たような構図があちらこちらで再現されているのが楽しい。シナリオについてもかなり映画版を踏襲しており、クリスティファンからすると悪くないのだが、三谷ファンにはさてどうだったのだろう。黄金期の本格ミステリとしてみれば中盤の聞き込みシーンなどはけっこうな見どころなのだが、三谷ファンにはやや冗長で退屈に思われた可能性もあるわけで。
とはいえ真相はミステリファンならずとも驚きの内容だから、少なくとも第一夜に関しては、三谷幸喜もそれほど無茶はしなくて済んだというところだろう。
問題はオリジナルの第二夜か。まあ、犯行の裏側を描くといっても、すでに結末が決まっているわけで、料理できる範囲は限られている。おそらく脚本の制限もいろいろとあるだろうし、無い物ねだりの気もするのだが、やはり三谷脚本にしては意外にまっとうというか大人しめというか。
三谷幸喜が本当にやりたかったのはこちらだろうし、もう少し弾けても良かったのではないかというのが正直なところだ。ただし、決してつまらないわけではなく、こちらも普通には楽しめた。共犯者が増えていく件などはけっこうな見せ場であろう。
ただ、シナリオも要注目ではあったのだが、本作で一番の話題になっていたのはキャストである。特に野村萬斎が演じる勝呂武尊(すぐろたける)。
あまりに独特で過剰な演技に賛否両論だったが、もともとポアロ自体がそういう個性的なキャラクターとしてクリスティに創造されたのであり、映画版でもそれを踏襲している。だから今更、野村萬斎が非難されるのは筋違いだと思うのだが、まあ、予備知識なしで客観的に見れば、確かにあのキャラ造形はすぐに受け入れられんよなぁ(笑)。
むしろ管理人などは、若い役者さんとベテランの役者さんの力量に差がありすぎて、そちらを見ている方がやや辛かった(苦笑)。
ともあれこの手のドラマには常に最悪を予想してしまうので、今回は比較的楽しめたのが嬉しい誤算。ミステリ好きを公言している三谷幸喜だけに、従来のクリスティファンに相当気を配りつつ、可能な範囲で挑戦しているのはすごく伝わってきた。
これならもう一本、何か別のミステリをやってみても良いのではないかな。
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やはり本格というスタイルでは映像的に地味になりがちですから、なかなか企画が通りにくいんでしょうね。サスペンスやハードボイルドなどは動きもあるし、やはり映像向きという気がします。
フランスミステリなんかは密かに二時間ドラマになっていたりするのも多いんですよね。そういや目暮警部なんてのもありましたな(笑)