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 連城三紀彦の『人間動物園』を読む。著者の誘拐ものの傑作として知られる作品だが、恥ずかしながらこれが初読である。

 記録的な大雪に都市機能が麻痺する中、埼玉県西北部の外れに住むある女性から誘拐事件の知らせがあった。その女性は前日に犬の誘拐を通報してきた経緯があるため、警察も半信半疑で通報先へ向かう。だが、今回は紛れもなく人間の誘拐事件、しかも誘拐されたのは大物政治家の孫娘であった。
 問題はそれだけではなかった。被害者の自宅には至るところに盗聴器が仕掛けられていたのだ。警察の動きは著しく制限され、被害者の母親が精神的に追いつめられていく……。

 人間動物園

 なるほど。連城三紀彦が誘拐ものを書いていたということで、相当トリッキーな作品だろうとは予想していたが、こうきたか。
 本作も二重三重に驚かせてくれる作品であり、その仕掛けを支えるいつもどおりの精緻なプロット。いやいや相変わらず見事である。しかもただ驚かせるのではなく、誘拐ものとしてのオリジナリティもかなりのものだ。
 ストーリーも悪くない。誘拐犯からの連絡を待つという展開はともすれば動きに欠け、やや退屈な流れに陥りがちだが、著者はここで試行錯誤する警察の捜査や推理を細かく見せていくことで、逆に読者に濃密な時間を与えてくれる。小説としての読みどころはむしろこちらにこそあると、あえて言っておこう。

 引っかかる点もないではない。特に前半に顕著なコミカルな味付けは、犯人像から連想される社会派的なテーマともうひとつイメージが一致せず、なぜこういうノリでまとめたのかが気になった。特にラストなどはかなりアナーキーなオチを持ってきているので、余計その感を強くした。
 まあ、そこまで連城作品を読んでいるわけではないので確かなことは言えないが、「陽だまり課事件簿」の例もあるように、コミカルな要素を落とし込むことが単に不得意なだけかもしれない。

 そういうわけで多少のクセはあるものの十分読み応えある一冊。誘拐ミステリを語る上で、本作はマストの一冊と言えるだろう。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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