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 たまにはノンフィクションでもということで、ベルナール・ウダンというフランスのジャーナリストが書いた『殺人の歴史』を読んでみる。

 殺人の歴史

 内容としては題名のまんま、と言いたいところだが、これがちょっと予想と違っていた。殺人の歴史というよりは、どちらかといえば犯罪を取り巻く環境や周辺分野を含めての解説本。社会的に犯罪がどういう形で扱われてきたか、犯罪が人々にとってどういう注目をされてきたかに力点が置かれている。ぶっちゃけると、なぜ人は殺人を娯楽として楽しむことができるのかということである。
 ただ、あまり深い考察ではなく、あくまで事実の羅列ににとどまっているのが読みやすくもあり物足りなくもあり。まあビジュアルメインの本だからその辺は仕方がないとはいえ、ビジュアルそのものは扇情的なので、もしかすると著者自身が一番、犯罪を楽しんでいるふしもある(苦笑)。

 ミステリ好きとして気になるのは、殺人と文学の関係を扱った第4章か。
 ただ、代表としてクリスティーやカーを挙げるのはいいとして、現実の殺人から最も遠いところにある頭脳ゲームという扱いでまとめていたり、また、それらの唯一の例外としてシムノンのメグレ警視を挙げている程度なので、やはり浅さは否めない。
 さらにはアメリカのハードボイルドをロマン・ノワールとして一括りにするのはともかく、ハメットやチャンドラーの系譜という文脈でハーバート・リーバーマンやパトリシア・コーンウェルまで並べるのはさすがに違和感ありすぎである。

 結局、テーマは面白いのだけれど、ただ事実を並べるだけの構成ではそのテーマを語るには少々弱い。しかもその事実すら専門外のパートでは認識不足のところも多い。双書の性質もあるのでそこまで詳しくなくてもいいけれど、もう少し著者の主張はほしかったところだ。
 ちなみに図版が豊富なのは高ポイントだが、図版のキャプションが長すぎる上、レイアウトが全体にもごちゃごちゃしていて読みづらい。まあ何かと残念な一冊であった。


テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌




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