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 ジョージェット・ヘイヤーの『紳士と月夜の晒し台』を読む。あまり馴染みのない名前だけれど、森氏の『世界ミステリ作家事典 本格派篇』にもちゃんと載っている、歴とした黄金期のミステリ作家。四年ほど前に創元から二冊刊行されたものの、なんとなく食指が動かなくてしばらく積んでいたのだが、今年に入って論創海外ミステリからも刊行されたため、そろそろ潮時と思って読み始める。

 ロンドンから程近くにある小さな村アシュリー・グリーン。深夜、その村の広場にある晒し台で、両足を突っ込んだまま死んでいる男が発見された。被害者はロンドンで会社を経営するアーノルド。地元警察は被害者が地元民ではないと知るや、早々にスコットランドヤードに応援を頼み、ロンドンからハナサイド警視がやってくる。
 捜査は意外に難航した。アーノルドは日頃の言動から敵が多く、容疑者だらけだったのだ。アーノルドの腹違いの弟ケネスに妹アントニア、その婚約者メジャラー、さらには死んだと思われていたアーノルドの兄ロジャー。しかし動機は山ほどあるが決定的な証拠はない。おまけに彼らの誰もが変人だらけで……。

 紳士と月夜の晒し台

 上で著者に馴染みがないとは書いたが、実はジョージェット・ヘイヤー、歴史ロマンスの世界ではなかなかの大家らしく、なんとミステリ以外での邦訳作品が既にいくつかあるとのこと。ううむ、まだまだ知らないことは多いのう。

 それはともかく。ロマンスの書き手らしく、ストーリーは登場人物たちの恋愛模様も巧く織り交ぜつつ、関係者の推理合戦的様相で読ませるという、なかなかの芸達者振りを披露している。正直、推理合戦というより半分は無駄口、おふざけといったもので、とにかくそのやりとりが非常に面白いというか神経に障るというか(苦笑)。大した展開があるわけではないけれど、ページターナーであることは間違いないだろう。
 一方でミステリ的興味で読ませるかとなると、こちらはやや苦しいところだ。本格としてのフォーマットはまずまず、伏線なども一応はあるけれど、肝心の決め手になる部分の出し方は上手とはいえないし、表題にもなっている晒し台のネタは腰砕け。もうひとつ肝を外している感じは否めない。
 邦訳はまだ二作残っているから性急な結論は避けたいが、このレベルが続くようなら辛いかな。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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