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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

鷲尾三郎『妖魔の横笛』(盛林堂ミステリアス文庫)

 盛林堂ミステリアス文庫は西荻窪の古書店、盛林堂さんが私家版として発行しているシリーズ。これまでもいくつか紹介してきたが、本日は鷲尾三郎の『妖魔の横笛』。

 妖魔の横笛

「原子探偵団」
「妖魔の横笛」
「リボンの指輪」

 収録作は以上。鷲尾三郎の本というだけで既にかなりのレア度ではあるのだが、本書に収録しているのはこれまで単行本未収録で、かつ現在確認できている子供向けの全作品を収録というのだから、いやはやなんとも恐れ入る。

 まあ内容自体は予想の域を決して越えるものではなく、典型的な少年少女向けスリラー&サスペンスといったところ。一応トリックを用いた作品もあるにはあるが、相当にアレなレベルなのはご愛敬。とはいえけっこうスピーディーな展開で雰囲気作りも悪くない。

 むしろ残念なのはその分量だろう。「原子探偵団」は連載だったようで多少は長めだからよいけれど、その他の二作品は文字どおり起承転結だけで終わるようなイメージでさすがに物足りない。これは作者というより雑誌側の都合だったのだろうけれど、まあ、この時代のジュヴナイルにこんなケチをつけても始まらないか(苦笑)。

 なお、作品以上にありがたかったのが解説である。全著書紹介、しかもこれがなんとすべて書影つき、加えて古書の入手難易度つき(笑)というからなかなか実用的である。

 ちなみに盛林堂ミステリアス文庫は数量限定なのでタイミングを逃すとそれっきりだが、まめに盛林堂さんのブログをのぞいていれば情報はちゃんと入手できるし、ネット通販も可能である。二十年前ならこういう本はそれこそ知らないまま終わっていたのだが、いや、まったく便利な時代になりました。
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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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