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キャロリン・キーン『歌うナイチンゲールの秘密 ナンシー・ドルーの事件簿』(論創海外ミステリ)
キャロリン・キーンの『歌うナイチンゲールの秘密』を読む。本国ではいまでも絶大なる人気を誇る少女探偵ナンシー・ドルーの活躍するシリーズからの一作。
このシリーズは複数作家で書き継ぐ、いわゆるハウスネームのシステムをとっている。そのうちオリジナルといわれる作品は最初の五十六作と言われているが、本書の解説によると、初期作品をほぼ一人で手がけたミルドレッド・A・ワート・ベンソンの手になる二十五作目までが、さらに正典として扱われるらしい。本作は二十番目の作品ということで、もちろん正典からの一冊ということになる。
こんな話。友人たちと父の誕生日プレゼントを探しにきたナンシーは、そこで体調を崩した老婦人と出会う。家まで送りとどけたナンシーたちの帰り際、老婦人はナンシーがプレゼントを探していることを知り、ある骨董商を紹介してくれる。
さっそく骨董商へ向かうナンシーたちだったが、今度はスリと間違われている男性が警官らともめているところに遭遇。直前にスリらしき男を目撃していたナンシーは男性の濡れ衣を晴らすが、そのとき人ごみにスリの姿を発見、警官らと追跡するも見失ってしまう。しかし、スリはそのとき財布を落とし、無事に持ち主の元に返された。
騒ぎは収まったが、ナンシーはその場から去ろうとしなかった。スリが財布を落としたとき、何かが財布から落ちたような気がしたのだ。果たしてそこにはある男の子を写した写真が落ちていた。そして驚くべきことに、その男の子は、先ほど訪ねた老婦人の家にあった写真で見かけたばかりだったのだ……。

ナンシー・ドルー・シリーズを読むのはこれが二冊目なので、正直、正典その他の作品でどの程度の差があるかはわからないのだが、少なくとも本作を読むだけでこのシリーズの魅力は十分に伝わってくる。とにかくスピーディーでテンポのよいストーリー、適度なドキドキ感、瑞々しいキャラクターたち等々。
上で書いた紹介も、実はたった1章分、ページ数にして十ページほどの分量でしかない。それだけの分量なのに、いったいどれだけ場面転換や事件が起きるんだという(笑)。新聞小説もかくやという激しい展開で、まったく目を離せないのである。王家の跡取り騒動、スリの集団、デザイナーコンテストなど、いくつもの縦軸を絡ませながらサクッとまとめる手際も相当なものだ。
ついでにいえばご都合主義も相当なものだけれど、まあこの手のジュヴナイルにそれを望むと肝心のスピード感に影響を与えるので、そこは笑って見逃すべきだろう。
ところで本シリーズの大人向けバージョンとしては、そもそも創元推理文庫が一作目『古時計の秘密』から順に刊行していたのだが、どうやら八作目でストップしているようだ。面白いけれど、大人が続けて読むようなものではないし、やはりセールス的には厳しいか。
このシリーズは複数作家で書き継ぐ、いわゆるハウスネームのシステムをとっている。そのうちオリジナルといわれる作品は最初の五十六作と言われているが、本書の解説によると、初期作品をほぼ一人で手がけたミルドレッド・A・ワート・ベンソンの手になる二十五作目までが、さらに正典として扱われるらしい。本作は二十番目の作品ということで、もちろん正典からの一冊ということになる。
こんな話。友人たちと父の誕生日プレゼントを探しにきたナンシーは、そこで体調を崩した老婦人と出会う。家まで送りとどけたナンシーたちの帰り際、老婦人はナンシーがプレゼントを探していることを知り、ある骨董商を紹介してくれる。
さっそく骨董商へ向かうナンシーたちだったが、今度はスリと間違われている男性が警官らともめているところに遭遇。直前にスリらしき男を目撃していたナンシーは男性の濡れ衣を晴らすが、そのとき人ごみにスリの姿を発見、警官らと追跡するも見失ってしまう。しかし、スリはそのとき財布を落とし、無事に持ち主の元に返された。
騒ぎは収まったが、ナンシーはその場から去ろうとしなかった。スリが財布を落としたとき、何かが財布から落ちたような気がしたのだ。果たしてそこにはある男の子を写した写真が落ちていた。そして驚くべきことに、その男の子は、先ほど訪ねた老婦人の家にあった写真で見かけたばかりだったのだ……。

ナンシー・ドルー・シリーズを読むのはこれが二冊目なので、正直、正典その他の作品でどの程度の差があるかはわからないのだが、少なくとも本作を読むだけでこのシリーズの魅力は十分に伝わってくる。とにかくスピーディーでテンポのよいストーリー、適度なドキドキ感、瑞々しいキャラクターたち等々。
上で書いた紹介も、実はたった1章分、ページ数にして十ページほどの分量でしかない。それだけの分量なのに、いったいどれだけ場面転換や事件が起きるんだという(笑)。新聞小説もかくやという激しい展開で、まったく目を離せないのである。王家の跡取り騒動、スリの集団、デザイナーコンテストなど、いくつもの縦軸を絡ませながらサクッとまとめる手際も相当なものだ。
ついでにいえばご都合主義も相当なものだけれど、まあこの手のジュヴナイルにそれを望むと肝心のスピード感に影響を与えるので、そこは笑って見逃すべきだろう。
ところで本シリーズの大人向けバージョンとしては、そもそも創元推理文庫が一作目『古時計の秘密』から順に刊行していたのだが、どうやら八作目でストップしているようだ。面白いけれど、大人が続けて読むようなものではないし、やはりセールス的には厳しいか。
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