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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

クリス・コロンバス『ピクセル』

 レトロゲームをネタにした映画『ピクセル』を観賞。ガキの頃からゲーム好きで、社会に出てからも長らくゲーム業界にお世話になっている身としては、これは観ないわけにはいかない。

 1982年のこと、NASAはまだ見ぬ地球外生命体との交流を図ろうと、地球の様子や文化などをまとめ、電波に乗せて宇宙に送っていた。そのなかには当時爆発的に流行していたゲームの情報も含まれていた。だが、それを受け取った異星人はそれを地球からの宣戦布告と勘違いしてしまう……。
 時は流れ、2015年。異星人は受け取ったゲーム情報をもとに地球侵攻を開始した。巨大なゲームキャラクターが地球のあらゆるものをピクセル化していくなか、かつてのゲーム世界チャンピオンたちが立ち上がった。

 ピクセル

 まあ、B級臭はぷんぷん臭っているんだけれど(笑)、予告編がなかなか良くて、おまけに監督が『ホーム・アローン』や『ミセス・ダウト』などのホーム・コメディ、『ハリー・ポッターと賢者の石』や『パーシー・ジャクソンとオロンポスの神々』などのファンタジーアクションを撮ってきたクリス・コロンバスである。そこそこ悪くないレベルに仕上がっているのではないかと少し期待していたのだが、これがまあ何と予想以上に楽しい映画であった。

 「パックマン」「ギャラガ」「ドンキーコング」などなど1980年代の傑作ゲームのキャラクターが敵としてバンバン出てくるのだが、当時のゲームなので元はドット絵。それをピクセルによる3D化して見せてくれる。これらのキャラクターがけっこう違和感なく都市の情景や戦闘シーンに溶けこんでいて、そういう絵面を見ているだけでもなかなか楽しめる。
 ストーリーはいたってシンプルというか、よくある地球侵略もののパロディだが、それをゆるいギャグでつなぎつつ、要所では締める。テイストとしては『ゴーストバスターズ』あたりを思い浮かべてくれればよろしいかと。

 もちろん基本的にはB級なので、地球侵略ものといっても大作感はないし粗もいろいろある。間違っても感動などは期待できないけれど、普通にSFアクション映画としてよくまとまっており、昔のゲームを知らなくても十分楽しめる一作ではないだろうか(もちろん知っていれば面白さはさらに倍増するが)。
 管理人としては近年ゲームをここまでフィーチャーしてくれた実写映画はなかったので素直に嬉しい。
 それにしてもこういうバカなネタを最新特撮技術で大真面目に作り上げてしまうからハリウッドは侮れない。

 蛇足だが、本作の上映館はそこそこあるのだけれど、字幕版の上映が少ないのはちと困った。結局、仕方なく吹き替え版を見たのだが、肝心の主役の声優が大根に近いレベルでこれだけが痛恨の極み。
 よく言われることだが、声優と俳優は似て非なる仕事である。もちろん例外はあるだろうが、基本的には俳優は声優としては素人。それをいきなり重要な役に就かせるのはまったく意味不明だ。本作にしてもその俳優で集客が見込めるわけではないだろうに、よくあんなレベルでOK出したなぁ。

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Comments
 
黒田さん

そうなんですよ。脇を固める方々はいいんですけどねぇ。次はDVDで字幕版で見たいものです。

>ゲーム業界に身を置かれているとの事ですが、

ゲーム業界には大変お世話になっていますが、私自身はいちおう出版業界です。念のため(笑)

>「ATARI GAME OVER」はご覧になりましたか?

それがまだ未見です。ロートルのゲーム好きにとってアタリはやはり特別な会社ですから、そのうち観ようとは思っていたのですが。オススメとあればこれは早めに入手しなければ。
 
 この映画に興味はあったのですが、「宇宙人侵略ネタ」の映画が嫌いなのでスルーしていました。
 レビューを読むと「ゴーストバスターズ」+ギャグのノリっぽいですね。ちょっと見てみたいような気になってきました。

 俳優で集客を見込もうとするさもしい商法、なんだか当たり前になってきてイヤですね。声の演技はプロに任せればよいのに。
 調べてみたところ、主役以外の声優陣は豪華ですね。沢城みゆきさんのような中堅から、一城みゆ希さんや玄田哲章さんのようなベテランまで。このメンバーが主役に起用されればよかった……。

 ゲーム業界に身を置かれているとの事ですが、「ATARI GAME OVER」はご覧になりましたか?
 かつて一世を風靡したATARIの栄枯盛衰の末路(?)が映像で見られ、価格以上の内容でオススメです!
 
杣人さん

ゲームだけでなく80年代ネタは多いので中年以上のほうが楽しめる映画です(苦笑)。
意外な有名人が意外な使われ方をしているのも楽しいです。

ただ、くれぐれも字幕版で観ることをおすすめします。もう主人公の吹き替えが辛すぎて……。吹き替えた俳優さんに罪はありませんが、キャストを決定した担当者は責任重大です。
 
ご無沙汰しています。
『ピクセル』私もTVコマーシャルを見て「これ見たい」と言った一人です。
TVゲームは縁がありませんでしたが、sugata様の記事を拝見し当地の上映館を思わず検索してしまいました。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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