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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

筒井康隆『銀齢の果て』(新潮社)

 以前ほど漫画は読まなくなったのだが、それでも発作的に読みたくなることもあるもので、先日、二ノ宮知子『のだめカンタービレ』をまとめて買って一気に読んでしまった。これは面白いわ。会社の若い連中に勧められたのだが、クラシック界という設定もいいが、それよりもストーリー性とほのぼの感とギャグのバランスが絶妙。絵はあまり上手くないが、それすらも味に思える。

 筒井康隆『銀齢の果て』を読む。内容は老人版『バトル・ロワイヤル』といった趣だが、もちろん只のパロディなんかではなく、筒井氏お得意のブラックジョーク&スラップスティックが超満載。高齢化社会、老人問題等に対する問題提議と書くのは簡単だが、ある町内を舞台にとって、日本が抱えるあらゆるタブーを詰めこんだかのような徹底振りは凄まじいの一語。そのくせ以前にはあまり書かなかったヒューマニズムをちらちらっとのぞかせるあたりも巧い。
 正直、ここ数年の作品を読むにつけ少し物足りない思いをしてきたが、これは文句なし。強烈な描写と内容ゆえ、万人にお勧めできる作品ではないだろうが、だまされたと思ってとりあえず読むべし。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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