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先日読んだ『記憶のための殺人』に続き、ディディエ・デナンクスをもう一冊。ものは『死は誰も忘れない』。

 まずはストーリー。
 寮制の職業専門学校で孤独を噛みしめる少年リュシアン。あるとき同級生から「人殺しの息子」と罵られた彼は、寄宿舎の近くにある池で自殺する。体面を重んじる学校は自殺として処理を図る。
 二十四年後、リュシアンの両親、ジャンとマリーのもとへある若い研究者が現れた。ジャンが若い頃に体験した第二次大戦時のレジスタンス活動について取材したいのだという。ジャンは対独協力者を処刑した容疑で、戦後になってから投獄された過去があったのだ。ジャンは自分の過酷な体験を話し出すが……。

 死は誰も忘れない

 著者の興味は謎解きではなく、人間の闇や社会の暗部にある。日本流にいいえば社会派であり、フランス版松本清張みたいなイメージをもってもらえればよいだろう。『記憶のための殺人』もミステリーの体裁をとりつつアルジェリア移民に絡むフランス現代史や行政システムの課題に迫る作品だった。
 本作はそれがよりいっそう顕著な作品で、戦争の悲劇はもちろんのこと、フランスの司法システムにもアプローチする内容となっている。ほとんど戦争小説といってもよく、そこにミステリ的な味付けがされているぐらいの印象である。

 したがってミステリとしてはやや期待はずれだったが、小説としてはなかなか読ませる。
 物語のほとんどは過酷なレジスタンス活動の内幕であり、祖国を取り戻すという大義名分はありつつも、その手段はやはり暴力である。組織に入ったばかりのジャンをはじめとする末端の人々は、自分がどういう活動をしているのかも知らされず、ただただコマとして動くのみ。そこには個人の感情が入る余地はなく、ときには人の命も奪わなければならない。また、敵はドイツだけでなく、フランス人同士での対立や裏切りも少なくない。
 そういった非情な世界を、デナンクスは実に迫真性をもって描写してゆく。あとがきによるとレジスタンスの部分はほぼ実話に基づいているとのことで、そのリアルさも納得である。

 上でミステリとして期待はずれとは書いたが、要素だけをとってみると、実はミステリとしても傑作になった可能性はある。ジャンが巻き込まれた事件に潜む秘密、全体に仕掛けられたある仕掛けは、アイディアとして全然悪くない。
 トマス・H・クックあたりが手掛けたら相当いい感じに仕上がっていたと思うのだが、いかんせんそういう山っ気とはデナンクスは無縁らしく、割とさらっとまとめているのがもったいないところだ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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