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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

よしだまさし『姿三四郎と富田常雄』(本の雑誌社)

 仕事がほんの少し、山を越える。で、これといった目的もなく、だらだら休日を過ごす。愛犬の散歩と家族サービスも兼ねて買い物につきあったり、古本屋をのぞいたり、DVDを物色したり。最近、読書や映画のペースが落ちているせいか、かえって物欲だけは旺盛である。

 マイクル・ギルバートが亡くなったらしい。昨年まとまった作品を固め読みしたのだが、まだまだ未訳のものも多いはず。HMあたりは追悼特集を組みそうだが、未訳長篇もけっこう残っているはずなので、どこでもいいから出してもらえないものか。

 そんなことを書いていると、藤原編集室さんのHP『本棚の中の骸骨』で、晶文社のミステリがひとまず打ち止めになるとの知らせ。晶文社の台所事情が大きいらしいが、やっぱり翻訳ミステリは商売としてだいぶ厳しいようだ。新樹社や原書房などの予定をみるにつけ(そしてもちろん論創社も)、焦らず、確実に、良書を出していってもらいたいものだと思う。無理して企画が立ち消えになるのが一番残念だ。

 読了本は、よしだまさし『姿三四郎と富田常雄』。姿三四郎という人気キャラクターを生んだ富田常雄に関する評伝である。
 よしだ氏は「ガラクタ風雲」というサイトの管理者であり、冒険小説マニアであり、知る人ぞ知る古本マニア。氏が姿三四郎の物語とその作者、富田常雄にはまっていく様子はサイトの日記でタイムリーで読んでいたが、こうしてまとまったものを読むといっそう楽しめる。
 ただ、よしだ氏は文学者ではないので、評伝としての資料性に欠けたり、評論的な興味が薄いのは仕方あるまい。氏の真骨頂は巧みな話術であり、少なくとも富田常雄がなぜ面白いか、姿三四郎の物語がなぜ面白いのかは十分に伝わってくる。資料性に欠けるとは書いたが、それでもそうそう簡単には調べられない事実も多く、特に富田常雄の講道館ワールドがどのように構成されているかは、まったく富田常雄を読んだことがなくとも興味深い(でも正直、著作リストは欲しかったかな)。姿三四郎未体験者にとっては、大変有効な読書案内にもなっているだろう。私も読んでみますか。


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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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