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 先週から今週にかけて、『ミステリマガジン』と『週刊文春』で年末恒例のベストテンが発表されている。さすがに昨年のように海外版ベスト3までがまったく同じということはなかったが、やはりその顔ぶれは似通っており、この二誌のランキング差はほとんどなくなっているようなイメージ。
 差が出ているとすれば対象時期が一ヶ月ずれていることによる違い、そして版元による違いぐらいだろうか。『ミステリマガジン』ではハヤカワミステリの『ありふれた祈り』、『週刊文春』では文春文庫の『悲しみのイレーヌ』と、見事なまでに自社本が一位となっているところは笑えてしまう。まあ、それをいったら講談社の『IN★POCKET』のベストテンなんて、毎年のように講談社文庫の作品が一位を占めているのだが、あれはランキングではなくて単なる販促媒体だと思っているので、基本的には真面目に受け取ってはいけないものだろう。

 まあ、『IN★POCKET』の例は極端としても、良い作品はどのランキングであろうと評価されるべきだし、結果的にそのランキングが似通ってしまうのは当然といえば当然。だがそれではいくつものランキングが存在する意味がない。特に後発組は積極的に差別化や独自性を打ち出してほしいものだ(そもそもそうしないと売れ行きにも影響するはず)。
 『ミステリマガジン』あたりはベストテンの形態もひんぱんに変えており試行錯誤してきたイメージはあるけれど、雑誌に取り込んだあたりから企画色も薄れ、かなり難しいところにきているのではないか。雑誌の在り方も含め、この十年ほどはやや迷走気味である。
 原書房の『本格ミステリ・ベスト10』は本格ものに絞ったところで特色を打ち出しており、その姿勢は評価できるが、いかんせん頭数も減ってしまうから、質的にそれほどのものでなくてもランクインしてしまうという弱みがある。
 一方で、今やベテラン組といったほうがしっくりくる『このミステリーがすごい!』。そのランキング内容で独自性なら間違いなく突出していたが、昨年はやはり三位までが同じ結果だったように、最近はすっかり保守的。来週あたり2016年版が出るはずだが、なんとか初期の熱い誌面を取り戻してほしいものだ。巻き返しに期待したい。

 2015年ミステリマガジン&文春

 ランキング自体の内容に少し触れておくと(例によって海外部門だけだが)、今年は昨年の『その女、アレックス』のような絶対的本命がいないこともあって、常連が独占しそうな雰囲気である。
 先ほどのピエール・ルメートルの『悲しみのイレーヌ』、ウィリアム・ケント・クルーガー『ありふれた祈り』を中心に、インドリダソン『声』、ミネット・ウォルターズ『悪魔の羽根』、トム・ロブ・スミス『偽りの楽園』、フェルディナント・フォン・シーラッハ『禁忌』、ニック・ハーカウェイ『エンジェルメイカー』、ダニエル・フリードマン『もう過去はいらない』あたりが追いかける状態といったところだろう。正直、悪い作品はないのだろうが、やや新味に欠けるのは否めない。
 個人的にはこれまで興味のなかったウィリアム・ケント・クルーガーが気になる存在か。『ありふれた祈り』はノンシリーズだからお試しにはちょうどよさそうだ。今週中頃には『このミステリーがすごい!』も発売されるようだし、これで今年最後の購入本を決めるとしよう。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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