- Date: Sat 02 01 2016
- Category: 国内作家 林不忘・牧逸馬・谷譲次
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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牧逸馬『牧逸馬探偵小説選』(論創ミステリ叢書)
新年あけましておめでとうございます。
今年もいつもと同じように寝正月で過ごす。朝イチで雑煮をつくり、おせち料理をつまみながら昼からワインを一本空け、近場の神社へ初詣。
あとは特別変わったこともなく、暮れに録画してあった「RIZIN」を見ながらまたお酒とおせちという流れ。夜は早めにベッドへもぐりこんで読書三昧。いやあ、久々にゆっくりできて嬉しい。
さて、今年一発目の読了本は論創ミステリ叢書から『牧逸馬探偵小説選』。
牧逸馬は本名、長谷川介太郎。牧逸馬以外にも林不忘、谷譲次という三つのペンネームを駆使して戦前に活躍した作家である。
論創ミステリ叢書からは林不忘名義の作品を集めた『林不忘探偵小説選』も出ているが、そちらは時代物がメイン。かたや牧逸馬名義の作品は犯罪実話もので有名だが、本書では初期のより探偵小説的な作品を集めている。また、米国体験記を多く発表した谷譲次名義の作品とはけっこう境界が曖昧らしく、これまでも単行本化される際にあまり厳密なルールはなかったようだが、本書でも発表時に谷譲次名義だった作品がいくつか混じっている。
収録作は以下のとおり。
「都会冒険」
「夜汽車」
「襯衣」
「一五三八七四号」
「昼興行」
「コン・マンといふ職業」
「靴と財布」
「島の人々」
「うめぐさ」
「首から下げる時計」
「ネクタイ・ピン」
「トムとサム」
「上海された男」
「神々の笑ひ」
「死三題」
「鉋屑」
「ある作家の死」
「一つの死」
「百日紅」
「ジンから出た話」
「助五郎余罪」
「民さんの恋」
「山口君の場合」
「東京G街怪事件」
「砂」
「爪」
「赤んぼと半鐘」
「舞馬」
「一九二七年度の挿話」
「十二時半」
「ヤトラカン・サミ博士の椅子」
「碁盤池事件顛末」
「真夜中の煙草」
「舶来百物語」
「競馬の怪談」
「西洋怪異談」
「七時〇三分」

あくまで本書の作品にかぎっていうなら、牧逸馬の探偵小説の魅力はいい意味での軽さだろう。なかには重苦しい殺人などを扱ったものもあるけれど、オチを狙った小粋な作品に楽しめるものが多い。
作品別に見ると、特にそれを表しているのが冒頭の「都会冒険」。ニューヨークの新聞記者ヘンリイ・フリント君を主人公にした連作短編で、ほぼ全編コン・ゲームを扱っているのが面白い。まあ、そうはいっても当時のコン・ゲームなので、今読むと内容的にはそれほど大したものではなく、まるでコントのような他愛ない作品がほとんど。だが映画のワンシーンを思わせるような雰囲気は悪くない。
「上海された男」は巻き込まれ型のサスペンス風。こちらは軽みとは対極の作品になるが、終盤の展開が思いもよらないインパクトを生む。本書のベストだろう。
「ジンから出た話」は入れ子細工が印象的でちょっと鬱陶しいぐらいだが、なかなか洒落た一席。
「民さんの恋」は床屋の主人が客の喉をかき切るという出だしが衝撃的。その裏にある事件性も悪くない。
まあ、一作ずつ見ると正直そこまでの作品はないのだが、こじゃれた雰囲気や文章が平易なこともあって、戦前の作品とは思えないぐらいすいすい読めるのはありがたい。これは当時であればかなり貴重なエッセンスだったはずで、人気の理由のひとつだったのではなかろうか。
個人的な好みにはなるが、『林不忘探偵小説選』よりは楽しめたので満足である。
今年もいつもと同じように寝正月で過ごす。朝イチで雑煮をつくり、おせち料理をつまみながら昼からワインを一本空け、近場の神社へ初詣。
あとは特別変わったこともなく、暮れに録画してあった「RIZIN」を見ながらまたお酒とおせちという流れ。夜は早めにベッドへもぐりこんで読書三昧。いやあ、久々にゆっくりできて嬉しい。
さて、今年一発目の読了本は論創ミステリ叢書から『牧逸馬探偵小説選』。
牧逸馬は本名、長谷川介太郎。牧逸馬以外にも林不忘、谷譲次という三つのペンネームを駆使して戦前に活躍した作家である。
論創ミステリ叢書からは林不忘名義の作品を集めた『林不忘探偵小説選』も出ているが、そちらは時代物がメイン。かたや牧逸馬名義の作品は犯罪実話もので有名だが、本書では初期のより探偵小説的な作品を集めている。また、米国体験記を多く発表した谷譲次名義の作品とはけっこう境界が曖昧らしく、これまでも単行本化される際にあまり厳密なルールはなかったようだが、本書でも発表時に谷譲次名義だった作品がいくつか混じっている。
収録作は以下のとおり。
「都会冒険」
「夜汽車」
「襯衣」
「一五三八七四号」
「昼興行」
「コン・マンといふ職業」
「靴と財布」
「島の人々」
「うめぐさ」
「首から下げる時計」
「ネクタイ・ピン」
「トムとサム」
「上海された男」
「神々の笑ひ」
「死三題」
「鉋屑」
「ある作家の死」
「一つの死」
「百日紅」
「ジンから出た話」
「助五郎余罪」
「民さんの恋」
「山口君の場合」
「東京G街怪事件」
「砂」
「爪」
「赤んぼと半鐘」
「舞馬」
「一九二七年度の挿話」
「十二時半」
「ヤトラカン・サミ博士の椅子」
「碁盤池事件顛末」
「真夜中の煙草」
「舶来百物語」
「競馬の怪談」
「西洋怪異談」
「七時〇三分」

あくまで本書の作品にかぎっていうなら、牧逸馬の探偵小説の魅力はいい意味での軽さだろう。なかには重苦しい殺人などを扱ったものもあるけれど、オチを狙った小粋な作品に楽しめるものが多い。
作品別に見ると、特にそれを表しているのが冒頭の「都会冒険」。ニューヨークの新聞記者ヘンリイ・フリント君を主人公にした連作短編で、ほぼ全編コン・ゲームを扱っているのが面白い。まあ、そうはいっても当時のコン・ゲームなので、今読むと内容的にはそれほど大したものではなく、まるでコントのような他愛ない作品がほとんど。だが映画のワンシーンを思わせるような雰囲気は悪くない。
「上海された男」は巻き込まれ型のサスペンス風。こちらは軽みとは対極の作品になるが、終盤の展開が思いもよらないインパクトを生む。本書のベストだろう。
「ジンから出た話」は入れ子細工が印象的でちょっと鬱陶しいぐらいだが、なかなか洒落た一席。
「民さんの恋」は床屋の主人が客の喉をかき切るという出だしが衝撃的。その裏にある事件性も悪くない。
まあ、一作ずつ見ると正直そこまでの作品はないのだが、こじゃれた雰囲気や文章が平易なこともあって、戦前の作品とは思えないぐらいすいすい読めるのはありがたい。これは当時であればかなり貴重なエッセンスだったはずで、人気の理由のひとつだったのではなかろうか。
個人的な好みにはなるが、『林不忘探偵小説選』よりは楽しめたので満足である。
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明けましておめでとうございます。
面白そうな話題が出せるかどうかは自信ありませんが、面白い本はぼちぼち読んでいきたいと思っています。今年もどうぞよろしく。