- Date: Fri 08 01 2016
- Category: 海外作家 ケンドリック(ベイナード)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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ベイナード・ケンドリック『暗闇の鬼ごっこ』(論創海外ミステリ)
論創海外ミステリからベイナード・ケンドリックの『暗闇の鬼ごっこ』を読む。著者は日本ではあまり知られていないが、本国アメリカでは探偵作家クラブの創設に尽力し、初代会長まで務めた人で、1967年にはMWA巨匠賞も受賞している。
我が国ではかろうじてポケミスから『指はよく見る』一冊が出ているのみだが、同作に登場するシリーズ探偵、ダンカン・マクレーンが本作『暗闇の鬼ごっこ』でも活躍する。
こんな話。別れた元夫のブレイクから真夜中の信託基金ビルに呼び出されたジュリア。そのビルはかつて忌まわしい事件が起こり、ブレイクが失明する羽目になった場所でもあった。怪訝に思いながらもビルに向かったジュリア。そして彼女はそこで、吹き抜けになっている八階からブレイクが墜落死するのを目撃する。
容疑者は同じ階にいた息子のセスに向けられたが、関係者がまたも墜落死する事件が発生して……。

本作最大の特徴は、シリーズ探偵ダンカン・マクレーンが盲目の探偵であるということ。
盲目の探偵というと、ホームズのライバルの一人でもあるマックス・カラドス、あるいはデイヴィッド・ローンの『音の手がかり』などで活躍する元音響技師のハーレックあたりが比較的知られているところだろう。
彼らに共通するのは、目が見えないことで逆に聴覚など他の感覚が発達し、ついでに推理や判断する力もアップしたという点。そんなスキルを武器に犯罪を解決していくのがミソであり、読みどころでもある。
本作のダンカン・マクレーンもその例に漏れず、事件以前にまずその超人的なキャラクターに惹かれる。加えて本作ではなんと被害者も盲目、しかも連続墜落死事件という導入である。普通の本格に比べるとハッタリの度合いは非常に強く、本作ではそれが効果的であり、魅力にもなっている。
ただ、魅力的なのはそこまでで、残念ながら本格探偵小説としてはいまひとつと言わざるを得ない。トリックが弱いのもあるが、説明やロジックが粗いのいはいただけない。
また、文章に硬さが目立つのも気になった。悪文というほどではないが、変にハードボイルドよりというか物語にあまりマッチしていない印象なのである(訳の影響もあるかも)。作者のめざす部分がもしかすると本格ではなく、サスペンス等にあるのかもしれないが、キャラクターや内容をみるかぎりは、もう少し娯楽寄りにまとめた方が良かったのではないだろうか。
残念ながら序盤ほどの興味が持続せず、やや消化不良気味の一冊であった。
我が国ではかろうじてポケミスから『指はよく見る』一冊が出ているのみだが、同作に登場するシリーズ探偵、ダンカン・マクレーンが本作『暗闇の鬼ごっこ』でも活躍する。
こんな話。別れた元夫のブレイクから真夜中の信託基金ビルに呼び出されたジュリア。そのビルはかつて忌まわしい事件が起こり、ブレイクが失明する羽目になった場所でもあった。怪訝に思いながらもビルに向かったジュリア。そして彼女はそこで、吹き抜けになっている八階からブレイクが墜落死するのを目撃する。
容疑者は同じ階にいた息子のセスに向けられたが、関係者がまたも墜落死する事件が発生して……。

本作最大の特徴は、シリーズ探偵ダンカン・マクレーンが盲目の探偵であるということ。
盲目の探偵というと、ホームズのライバルの一人でもあるマックス・カラドス、あるいはデイヴィッド・ローンの『音の手がかり』などで活躍する元音響技師のハーレックあたりが比較的知られているところだろう。
彼らに共通するのは、目が見えないことで逆に聴覚など他の感覚が発達し、ついでに推理や判断する力もアップしたという点。そんなスキルを武器に犯罪を解決していくのがミソであり、読みどころでもある。
本作のダンカン・マクレーンもその例に漏れず、事件以前にまずその超人的なキャラクターに惹かれる。加えて本作ではなんと被害者も盲目、しかも連続墜落死事件という導入である。普通の本格に比べるとハッタリの度合いは非常に強く、本作ではそれが効果的であり、魅力にもなっている。
ただ、魅力的なのはそこまでで、残念ながら本格探偵小説としてはいまひとつと言わざるを得ない。トリックが弱いのもあるが、説明やロジックが粗いのいはいただけない。
また、文章に硬さが目立つのも気になった。悪文というほどではないが、変にハードボイルドよりというか物語にあまりマッチしていない印象なのである(訳の影響もあるかも)。作者のめざす部分がもしかすると本格ではなく、サスペンス等にあるのかもしれないが、キャラクターや内容をみるかぎりは、もう少し娯楽寄りにまとめた方が良かったのではないだろうか。
残念ながら序盤ほどの興味が持続せず、やや消化不良気味の一冊であった。