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三橋一夫『コショウちゃんとの冒険』(盛林堂ミステリアス文庫)
西荻窪の古書店、盛林堂さんのプライベートブランド「盛林堂ミステリアス文庫」から、三橋一夫の『コショウちゃんとの冒険』を読む。なんと三橋一夫作品集成第1巻ジュニア小説篇と副題があり、今後もシリーズ化されている模様なのがまず嬉しい。
刊行されたのは昨年の八月だが、同じタイミングで戎光祥出版の『魔の淵』も出版され、盛林堂さんでは二冊同時注文で小冊子『三橋一夫ジュニア読本』もつけるなど、ちょっとした三橋祭りになっていた記憶がある。
最近はクラシックの復刊が当たり前のようになってしまって、感覚が麻痺しているところもあるが、つい十年ほど前は三橋一夫の新刊本なんて夢のような話だった。もちろん今でもそのほとんどがレア作品とはいえ、ネットなどを利用すれば普通に数タイトルが新刊で買えるようになったのだからすごい時代である。これはミステリの復刻ブームだけでなく、ネットやDTP技術の発達も必須だったわけで、この三十年ほどの変化は実に劇的である。
さて、それはともかく『コショウちゃんとの冒険』である。まずは収録作から。
第一部 ジュニア探偵小説
「鉄のつめ」
「鉄爪大将」
「少年探偵小説 ダム少年野球団」
「健次くんのちえ」
第二部 ジュニアSF・怪奇・冒険ファンタジー
「原子船海を行く」
「世界怪奇小説 白ねこのたましい」
「怪奇実話 そこにもうひとりの和子が」
「もうひとりのわたし」
「おなかの中からの声」
「ファンタジー・冒険小説 コショウちゃんとの冒険」
「愛と勇気と夢」(エッセイ)

本書に収録されているのは探偵小説系の作品とSF・怪奇・冒険ファンタジー系の作品。大きく二部立てとなっており、それぞれに三橋一夫の明朗小説的側面、ふしぎ小説的側面が感じられて興味深い。
特に探偵小説系の作品は子供向けかつ連載ものということもあってかストーリー展開が波乱万丈で、明朗小説の子供版というイメージ。ただ、サービス精神が過剰すぎるというか、主人公の子供たちの勝手な行動にイラっとさせられることも少なくない(苦笑)。
一方のSF・怪奇・冒険ファンタジー系の作品は小粒なものが多く、正直物足りなさは残るが、「コショウちゃんとの冒険」だけは別格。実はこの作品のみ単行本未収録どころか未発表長篇なのである。なんと三橋一夫がお孫さんのために八十歳で書いたという作品であり、つまり本作に関してはレア本の復刻どころではなく、普通に新作ということになる。探偵小説ファンや三橋一夫ファンにはとんでもないプレゼントだが、内容的にもスリリングかつアイディアも面白く、予想以上に楽しめる作品だったので一安心。
2巻目以降の予定はまだ発表されていないようだが、とりあえず全3巻というのは決定事項らしく、期待はいやがうえにも高まる。頼むから打ち切りなんて羽目にならないでね。
刊行されたのは昨年の八月だが、同じタイミングで戎光祥出版の『魔の淵』も出版され、盛林堂さんでは二冊同時注文で小冊子『三橋一夫ジュニア読本』もつけるなど、ちょっとした三橋祭りになっていた記憶がある。
最近はクラシックの復刊が当たり前のようになってしまって、感覚が麻痺しているところもあるが、つい十年ほど前は三橋一夫の新刊本なんて夢のような話だった。もちろん今でもそのほとんどがレア作品とはいえ、ネットなどを利用すれば普通に数タイトルが新刊で買えるようになったのだからすごい時代である。これはミステリの復刻ブームだけでなく、ネットやDTP技術の発達も必須だったわけで、この三十年ほどの変化は実に劇的である。
さて、それはともかく『コショウちゃんとの冒険』である。まずは収録作から。
第一部 ジュニア探偵小説
「鉄のつめ」
「鉄爪大将」
「少年探偵小説 ダム少年野球団」
「健次くんのちえ」
第二部 ジュニアSF・怪奇・冒険ファンタジー
「原子船海を行く」
「世界怪奇小説 白ねこのたましい」
「怪奇実話 そこにもうひとりの和子が」
「もうひとりのわたし」
「おなかの中からの声」
「ファンタジー・冒険小説 コショウちゃんとの冒険」
「愛と勇気と夢」(エッセイ)

本書に収録されているのは探偵小説系の作品とSF・怪奇・冒険ファンタジー系の作品。大きく二部立てとなっており、それぞれに三橋一夫の明朗小説的側面、ふしぎ小説的側面が感じられて興味深い。
特に探偵小説系の作品は子供向けかつ連載ものということもあってかストーリー展開が波乱万丈で、明朗小説の子供版というイメージ。ただ、サービス精神が過剰すぎるというか、主人公の子供たちの勝手な行動にイラっとさせられることも少なくない(苦笑)。
一方のSF・怪奇・冒険ファンタジー系の作品は小粒なものが多く、正直物足りなさは残るが、「コショウちゃんとの冒険」だけは別格。実はこの作品のみ単行本未収録どころか未発表長篇なのである。なんと三橋一夫がお孫さんのために八十歳で書いたという作品であり、つまり本作に関してはレア本の復刻どころではなく、普通に新作ということになる。探偵小説ファンや三橋一夫ファンにはとんでもないプレゼントだが、内容的にもスリリングかつアイディアも面白く、予想以上に楽しめる作品だったので一安心。
2巻目以降の予定はまだ発表されていないようだが、とりあえず全3巻というのは決定事項らしく、期待はいやがうえにも高まる。頼むから打ち切りなんて羽目にならないでね。
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