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 原書房からスタートした「エラリー・クイーン外典コレクション」の二冊目『摩天楼のクローズドサークル』を読む。
 ハウスネームとしてのエラリー・クイーン作品から本格テイストの傑作?を紹介するこの叢書。今回の実作者は、パルプ雑誌中心にライトなハードボイルドを量産した作家リチャード・デミングである。わが国ではポケミスの『クランシー・ロス無頼控』が知られているが、まあ、知られているといっても普通のミステリファンレベルでは、あまり読んだ人もいないだろう。むしろチャーリーズ・エンジェルや刑事スタスキー&ハッチのノヴェライゼーションを書くときのマックス・フランクリン名義の方が知られているかもしれない。
 そんなクイーンとはかなり遠いところにいるイメージのデミングがどのような作品を書いたのか。興味はそこに尽きる。

 友人の私立探偵チャック・ベアと仕事後の一杯をやろうとしていた隻眼の警部ティム・コリガン。だがバーについて間もなくニューヨークを未曾有の大停電が襲った。ティムが本部に連絡を入れると街はもちろん大混乱。騒ぎを収める警官も足りず、ティムは急遽、本部から捜査を指示される。
 現場はニューヨークのとある高層ビル、その二十一階に事務所を構えるバーンズ会計士事務所。そこで死人が出たというのだ。苦労して現場にたどり着いたティムとチャックがさっそく現場を確認すると、当初は事故もしくは自殺と考えられていたが、その状況から明らかに殺人であることが判明する。果たして犯人は当時、二十一階にいた人物の中にいるのか……。

 摩天楼のクローズドサークル

 ううむ、シリーズ第一弾の『チェスプレイヤーの密室』がとりあえず本格の体をとっていたのに対し、本作はほぼハードボイルドタッチ。パルプ雑誌を主戦場にしていた代作者デミングが、そのまま自分の持ち味を生かしている印象だ。探偵役やその他のキャラクター、さらには彼らのやりとりもクイーンテイストはほぼナッシング。クイーンの聖典では滅多に見られないお色気描写も出てくるから驚く。

 ただ、それらはあくまで文章のスタイルやキャラクターの話で、設定はなかなか本格テイスト。
 何より邦題の『摩天楼のクローズドサークル』が示すように、舞台は停電のため一時的にほぼクローズドサークルと化した高層ビルの二十一階。限定された状況で物語が進行し、しかも連続殺人が発生するに及び、その場の中の誰かが犯人であることは決定的となるという展開は魅力的。サスペンスを盛り上げる上でも不可能犯罪興味の上でも俄然輝きを増してくる。
 これでメイントリックがそこそこ良いとか、ロジックを押し出したクライマックスがあれば良かったのだが、その点は惜しくも力不足であった。

 まとめ。クイーンを意識した過大な期待は禁物だが、B級スリラーあるいは軽ハードボイルドとしては途中で退屈もせず、うまくまとまった一作。ただ、個人的には『チェスプレイヤーの密室』の方が楽しめた。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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