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 先日に続いてレックス・スタウトをもういっちょ。ものは『殺人犯はわが子なり』。1956年、スタウト中期の作品である。

 こんな話。はるばるネブラスカ州はオマハからウルフのもとにやってきた資産家のヘロルド。彼の依頼は十一年前に勘当した息子ポールの捜索だった。
 さっそくウルフはアーチーに命じて新聞広告を打ち、情報提供を呼びかけたが、なぜか応じてきたのは新聞社や弁護士や警察といった面々。それもそのはず、広告に使ったポールのイニシャルと、現在公判中の殺人事件の容疑者のイニシャルが同じだったのだ。
 念のために公判をのぞいたアーチーは、まさしく容疑者がポールと同一人物であることを確信するが……。

 殺人犯はわが子なり

 単純な失踪人捜索と思われた事件が、連続殺人事件へと発展するのが本作の大筋。ミステリとしては常道だが、裁判所で容疑者を確認したり、弁護士と共同戦線を張るといった導入は悪くない。
 ただ連続殺人へとつながるあたりから物語は失速気味となる。というのもそれらの殺人が、犯人が最初から意図したものではなく、後から止むを得ず引き起こされたものであることが明白なため、第二第三の事件へと興味が持続しないのである。意地悪く言えば、ストーリーを引っ張るためだけの事件という感じが強い。

 気になる点がもうひとつ。ウルフの調査員キームズまでもが一命を落とすという、それなりに衝撃的な展開があるのだが、その点に関して著者は意外なほどあっさりと進めている。まるでプロットの一要素ぐらいの扱いで、個人的にはもう少し力を入れてほしかった部分だ。
 もちろんウルフとアーチーのやりとりはいつもどおり楽しめる。本作ではウルフの調査員たちが大挙出演するので、彼らのチームプレイや掛け合いも読みどころのひとつ。それだけにキームズの扱いがちょっと理解に苦しむところである。

 そこそこ短い長編でテンポもよい。だがそれはプロットがさせているわけではなく、キャラクターの力によるところが大きいのだろう。事件自体の妙、謎解きといったミステリ的な興味ではいまひとつ。
 キームズの件があるのでシリーズのファンなら必読だろうが、残念ながらトータルでは低調であった。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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