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 ちくま文庫版ヘレン・マクロイの第二弾、『二人のウィリング』を読む。

 まずはストーリー。
 精神科医のベイジル・ウィリング博士が自宅近くの煙草屋に入ったときのこと。あとから店に入ってきた男が、自分はベイジル・ウィリングだと名乗り、タクシーで去っていった。
 驚いたウィリングは男の後を追い、ある屋敷で行われているパーティーに潜入する。参加しているのは主催者の精神科医ツィンマー博士をはじめ、盲目の婦人、詩人、土建業者、クラブオーナーなどのセレブたち。
 やがて偽のウィリングを見つけたウィリングは二人でパーティーを抜け出し、名前を騙った理由を問いただそうとする。だが男は突然に苦しみだし、「鳴く鳥がいなかった」という謎の言葉を残して息をひきとってしまう……。

 二人のウィリング

 相変わらず安定した出来栄え。マクロイは本当にハズレがない。本作もマクロイお得意の精神分析を取り混ぜつつ、コンパクトにまとめた佳作である。
 偽ウィリングの正体とは? なぜ彼が殺されなければならなかったのか? さらには「鳴く鳥がいなかった」というダイイングメッセージの秘密とは? 立て続けに提示される魅力的な謎と、パーティーの主催者ツィンマー博士とその招待客を襲う連続殺人というサスペンスで、やや短めの長篇を一気に引っ張っていく。

 正直、謎ひとつひとつの種明かしはさほどでもないのだ。しかし、事件そのものの構図と真相が驚くべきもので、あらためてマクロイのプロット作りの上手さ、語り&騙りの妙に酔わされる。
 とりわけ巧いなと思ったのは、終盤近くで事件関係者が再びパーティーに招待される場面である。関係者それぞれの反応を順番に描き、いかにもこの中に犯人がいるんですよと言わんばかりの演出で、確か似たような趣向は『あなたは誰?』にもあったような気がするが、ここはマクロイの自信と稚気の表れとも取れるだろう。
 傑作、とまではいかないが十分にオススメできる一作。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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