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 先日、『明智小五郎事件簿 V 「魔術師」』が発売されたこともあって、あわてて積ん読の『明智小五郎事件簿 III「蜘蛛男」』を片付ける。
 どうせほとんど再読のシリーズなので、こちらとしてはボチボチ読み進めてもいいのだが、こういうのは溜めると絶対読まなくなるという一面もあるから(苦笑)、なんとか月一ペースを維持したいところではある。まあ、すでに遅れてはいるけれど。

 こんな話。東京のY町にある関東ビルディング。その小さな貸事務所に突如、稲垣と名乗る男が現れ、あっという間に美術商「稲垣商店」を開店させる。稲垣は事務員募集を騙って若い女性を誘拐し、その肢体を石膏像に塗り込めて、都内にばらまくという凶行に走る。稲垣こそ、後に「蜘蛛男」として日本中を震撼させた殺人鬼だったのだ。
 たまたまこの事件に遭遇した犯罪学者の畔柳博士と助手の野崎青年は、「蜘蛛男」が同じタイプの女性を狙っていると考え、警視庁の波越警部に協力して捜査へ乗り出すが……。

 明智小五郎事件簿III

 過去二度ほど読んではいるが、それもずいぶん昔のことで、けっこう内容を忘れている。今回あらためて読んで感じたのは、ここまで破天荒な内容だったかということに尽きるだろう(笑)。

 『蜘蛛男』は乱歩作品の中でいわゆる通俗スリラーに分類される作品だ。それまで乱歩が書いていた本格や変格の諸短編とは(猟奇的なテイストという面では共通するところも多いが)、まったく異なる路線である。その大きな違いは、一般読者を対象にし、とにかく物語の面白さで引っ張ることを第一としたこと。
 目的を達成するための手段として、乱歩は物語の大半を占める大きな仕掛けを考える。もちろん今、読むとバレバレではあるのだが、その仕掛けを最大限に活かすため、乱歩はとにかく伏線として数々のヤマ場やどんでん返しを設ける(もちろん雑誌連載という理由もあっただろう)。
 結果、ミステリとしては非常に粗い仕上がりとなり、ツッコミどころ満載となってしまうのだが、それだけで切り捨てるにはあまりに惜しいのも事実である。

 管理人が推したいのは、やはり明智と犯人の対決シーン。今読むとさすがに時代がかりすぎるきらいはあるが、ここまでお芝居的に押し出したのも本作が初めてだろう。そもそもこちらは子供の頃にこのイメージで刷り込まれている口なので、お互いが名乗るシーンなどもう感涙ものである。
 もちろんエログロ要素は必須。前半の執拗な蜘蛛男と被害者の描写やラストのパノラマシーンなどは当然としても、今読むと子供の頃には理解できなかったストックホルム症候群といった要素も含まれており、新たな気づきもあって嬉しくなる。被害者に対して案外さらっと流してしまうクールさもかなり意外だった。

 まあ、ミステリとしては確かにおバカな作品だが、いかがわしいパワーもまた乱歩の大きな魅力の一つであれば、本作は間違いなくそちら系の代表作。
 日本のミステリを語る上でやはり一度は読んでおくべき作品である、とまでは言わないが(笑)、いや、こういうのも含めてやはり乱歩は凄いと思うわけである。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





↓さん

コメントありがとうございます。
いやあ、自分で書いていて、まったく気が付きませんでした(爆)。
おかげさまでこっそり直すことができました(もう手遅れw)
【2016/09/21 00:01】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

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【2016/09/20 00:36】 | #[ 編集]















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