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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


カミ『ルーフォック・オルメスの冒険』(創元推理文庫)

 『ルーフォック・オルメスの冒険』を読む。『エッフェル塔の潜水夫』や『機械探偵クリク・ロボット』で知られるフランスのユーモ作家、ピエール=アンリ・カミが書いた、同時代の名探偵シャーロック・ホームズをネタにしたパロディである。
 まずは収録作。

第一部 Loufock-Holmès contre tous「ルーフォック・オルメス、向かうところ敵なし」
L'Assassinat de l'Accordeur「校正者殺人事件」
La Tragique Affaire des Somnambules「催眠術比べ」
La Main Rouge sur Blanc「白い壁に残された赤い大きな手」
Le Squelette Disparu「骸骨盗難事件」
Le Scaphandrier de Venise「ヴェニスの潜水殺人犯」
L'Assassinat du Commissaire「警官殺人事件」
Un Étrange Suicide「奇妙な自殺」
L'Écuyere Chauve「禿げの女曲馬師」
Un Vrai Flair de Limier「本物の嗅覚」
Étrangleurs de Hernies「証拠を残さぬ殺人」
L'Énigme du Canot Volant「空飛ぶボートの話」
Un Drame Passionnel「愛による殺人」
Les Pirates du Rail, ou l'Attaque du Train 11「列車強盗事件」
Les Mystères de la Rue Saint-Couic「聖ニャンコラン通りの悲劇」
L'Homme aux Deux Profils, ou l'Étrange Assassinat「ふたつの顔を持つ男」
La Villa Isolée「後宮の妻たち」
Réincarnée「生まれ変わり」
Les Mystères de Chicago, ou Cloches Muettes et Oeufs Qui Parlent「シカゴの怪事件-鳴らない鐘とおしゃべりな卵」
Marat, ou le Bain Fatal「ミュージック・ホール殺人事件」

第二部 Spectras contre Loufock-Holmès「ルーフォック・オルメス、怪人スペクトラと闘う」
L'Affaire des Malles Sanglantes「血まみれのトランク事件」
Le Mystère de Trou-du-pic「《とんがり塔》の謎」
Le Trou de Clarinette「〈クラリネットの穴〉盗難事件」
La Mystèrieuse Guillotine「ギロチンの怪」
Les Bandits de l'Atlantique「大西洋の盗賊団」
Le Damier Qui Tue「チェッカーによる殺人」
Le Bébé Rouge「人殺しをする赤ん坊の謎」
Le Secret du Sphinx「スフィンクスの秘密」
Les Escargots de Minuit「真夜中のカタツムリ」
Le Clown Mystérieux「道化師の死」
Le Mystere du Champ de Courses「競馬場の怪」
Les Microbes Sanglants「血まみれの細菌たち」
Le Mystère des Catacombes「地下墓地の謎」
Le Tango de l'Échafaud「死刑台のタンゴ」
Le Retour de l'Incinéré「巨大なインク壺の謎」

 ルーフォック・オルメスの冒険

 いやあ、カミって本当にアホだわ(褒めてます)。
 オルメスのシリーズ作品はいくつか読んだことはあるけれど、単品で読むとあまりのアホさ加減に、これはもしかしたら、こちらの読み方が悪いのかぐらいに思えることもあったのだが、まとめて読むとやはり相当にぶっ飛んだシリーズであることを再認識できた。
 全編これコントか冗談のような話ばかりで、しかもシナリオのようなスタイルで書かれているから、よけいドリフのコントみたいに思えてくる。
 これが先にあげた『エッフェル塔〜』や『機械探偵〜』のような長篇だと、少しは裏テーマや著者のメッセージみたいなものも感じられないこともないのだが、本作の場合はストレートに笑いのみを追求している感じ。

 もう、ホームズとか関係なし。事件、犯人、探偵、論理、科学すべてがくだらなすぎて楽しい。
 例えば管理人お気に入りの一品は「禿げの女曲馬師」。
(以下ネタバレあり、ネタバレというほどのネタでもないけれど)
 アパートの七階から墜落してきた女曲馬師が、その場にあった地球儀に衝突して死亡する。だが死因はなんと溺死。ちょうど大西洋にぶつかったからという推理も出る中、どうやら真相は地球儀の中に水が入っていて、それで窒息したらしい……などという話がてんこ盛りで、もう脱力しまくりである。とにかく一度は騙されたと思って読んでほしい怪作ぞろい。
 訳者は大変だったろうけれど、ノリノリな感じが伝わってきてそちらも◎

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Comments

Edit

SIGERUさん

お久しぶりです。ブラッドベリとかレオ・ブルースとか探偵小説四人衆の記事でしたね。カミも守備範囲とはさすがです。しかも出帆社版をちゃんと持っていらっしゃる。
私は創元で初めてまとめ読みしたのですが、久々にクラクラする読書ができて(笑)、いやホントに楽しい一冊でした。

Posted at 00:32 on 10 29, 2016  by sugata

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オルメス

ご無沙汰しています。と云ってもかなり以前に一度か二度書き込んだだけの者ですが(笑)。sugataさんのレビュー、いつも拝読させていただいてます。ルーフォック・オルメスが大好きなのでコメントしました。
学生時代、立風書房「新青年傑作選」の翻訳編で「火葬にされた男の帰宅」「血塗れの細菌」などを初めて読み、その奇想と馬鹿馬鹿しさとに吹き出した覚えがあります。まさにカミの如き才能。出帆社版は愛読書でした。創元推理文庫で完全版が出たのですね。嬉しいことです。

Posted at 19:24 on 10 28, 2016  by SIGERU

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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