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 エリザベス・デイリーの『閉ざされた庭で』を読む。アガサ・クリスティが愛読していた作家というキャッチのとおり、その作風はアメリカ出身ながら英国本格探偵小説風味である。全体的に上品でまったり、それでいて底意地の悪さもちらほら窺えるというタイプ。
 ただ我が国での人気はクリスティ・レベルとはいかず、これまではポケミスで『予期せぬ夜』、『二巻の殺人』の二冊、今はなき長崎出版のGemコレクションで『殺人への扉』(これだけ積ん読)が紹介されているのみ。
 やはり全体的に地味すぎるのか、あと、言葉は悪いが、下手にクリスティの名前なんか出すものだから、どうしても劣化版クリスティみたいなイメージがついてきている気もする。
 さて、本作ではこうした評価をひっくり返せるかどうか。
 
 従姉のアビィに誘われて、アビィの隣人ジョニー・レッドフィールド家のパーティに訪れた古書研究家のガーメッジ。だが、パーティの参加者の間には、いまひとつ妙な空気が漂っていた。
 それもそのはず、ジョニーの叔母である資産家のマルコム夫人が、夫を亡くしてから少々おかしな言動をするようになっていたのだ。おまけに、そのマルコム夫人と疎遠になっていた継子の双子の相続問題が勃発するなど、水面下では何やらきな臭い動きも。そんな雰囲気の中、ついに邸宅のバラ園で殺人事件が起こる……。

 閉ざされた庭で

 ううむ、微妙である。
 人間関係が把握できないまま、早々にパーティー場面となるため、なかなか物語に入っていけないのが辛い。決して登場人物が多いわけではないのだが、主要人物のキャラクターをのみ込めないうちに意味ありげな(と思われる)会話が交わされるため、何となく消化不良のまま読まされる感じなのである。
 だが、ここを過ぎるとV時回復。徐々に個々のキャラクター性が発揮され、どうやらほとんどの関係者が信用できない者ばかりだということが理解できると、彼らのやりとりについては俄然おもしろくなってくる。
 クリスティが愛読していた理由も、ミステリとしての質より、こういう登場人物同士の駆け引きや心理のあやを描いているところにあったのではないか。

 とはいえ先に書いたように、ストーリーは地味だし、トリックについても特筆するようなものでもないため、これでスマッシュヒットにつながるかというと、やはり難しいと言わざるをえないだろう。
 個人的にはこういうタイプは嫌いではないのだが、もうひとつ著者ならではの武器がほしい。少し前に読んだミルワード・ケネディも似たようなタイプといえるが、あちらはもう少しクセが強くて、その分リードされている感じ。
 トータルではちょっと甘くしても六十点といったところか。

 とりあえずは読み残している『殺人への扉』も消化しておかないとだが、さて、いつになるやら。

 なお蛇足だが、シリーズ探偵の名前がポケミス版のヘンリー・ガーマジからヘンリー・ガーメッジに変更されたのはなかなかきつかった。
 日本語的にはガーメッジのほうが響きはいいし、母国語の発音に近いほうがいいのはわかる。しかし日本語の場合、同じ語でもイントネーションでだいぶ感じは変わるので、よほどの違いではないかぎり、そのまま踏襲してもいいのではないだろうか。いったん刷り込まれた固有名詞が変わるのはできれば避けてほしいところである。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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