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 古書山たかしの『怪書探訪』 を読む。筋金入りの古書収集マニアにして書痴(失礼)の著者による古書探索記&超キテレツ本紹介エッセイ集である。

 怪書探訪

 まあ、本とのつきあい方は人それぞれだとは思うが、本は読むだけでなく、買ったり、集めたりすることもまた大きな楽しみのひとつである。
 なかには図書館ですべて済ます方とか、断捨離を旨とする方もいらっしゃるだろうが、管理人などはまだそこまで物への執着を捨てきれず、というか捨てるつもりはまったくなく、気に入ったものはすべて手元に置いておきたいタイプ(それでも物理的な事情や経済的な事情、あるいは家庭的事情で処分しなければならない本はどうしてもあるんだけど)。

 著者もそうしたタイプのお人なのだろうが、ただし、管理人のようなぬるいレベルではなく、古書マニアのおそらく頂点に立つような人らしい。
 本のためならすべてを犠牲にする、などと書くと大げさに思われるかも知れないが、実際、いくら貴重だからといって、福田恆存旧蔵『サミュエル・ジョンソン英語辞典・初版一七五五年 二冊本 福田恆存旧蔵本』に自分の結婚資金250万円あまりを投げ打つことを考える人が世の中にどれだけいることか。さすがの著者も悩みに悩み、友人や親族一同に買うべきかどうか真剣に相談しているのである、って相談するなよそんなこと(笑)。
 この狂気にも似た熱意。どんなジャンルにおいても真のマニアとはそういうものだろうが、そのほとばしる熱意から繰り広げられるエピソードがたまらなく面白い。基本は古書好きアルアルの面白さなのだが、そのパワーが桁違いなのである。
 二年前、ミステリ珍本全集の一冊として復刊され、そのとんでもない内容でも話題になった『醗酵人間』などもそれまではン十万で取引されるレア本だったが、著者はそれを全ページ分コピーして製本することまでやっている。図書館の高価な学術書などを研究者がコピーする話は聞かないでもないが、それをなぜ『醗酵人間』でやる必要があったのか(笑)。

 ただ、本を集めるだけなら、もしかすると他にも凄い人はいるかもしれない。著者は単なる蒐集家ではなく、その熱に匹敵するだけの知識・蘊蓄も豊富で、対象の本にまつわるエピソードやなぜその本が自分にとって重要なのかも同時に語る。そこがいい。特に乱歩やカー、先の栗田信など探偵小説寄りの話が多いのも、ミステリファンにとって嬉しいところだ。
 文章も軽妙で、古書好きはもちろんだが、すべての本好きが楽しめる一冊といっていいだろう。唯一の欠点は、古書店にさっそく出かけたくなってウズウズしてしまうことか。

 ちなみに130ページのコラムに出てくるY書店は、その記述内容から察するに、おそらく管理人もお世話になっていた古書店である。しかも同じ町内の住人でもある。この古書店、けっこうあちらこちらの古本エッセイに出てくる名物店で、閉店はつくづく残念であった。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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