- Date: Tue 31 01 2017
- Category: 国内作家 島田一男
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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島田一男『黄金孔雀』(ゆまに書房)
本日の読了本は島田一男の『黄金孔雀』。サブカル系の評論家、唐沢俊一氏が監修した〈カラサワ・コレクション〉からの一冊である。
〈カラサワ・コレクション〉とは古本を趣味とする唐沢氏が古い少女小説を復刊した選集である。2003年から2004年にかけて四冊刊行されたが、そのうちの西条八十 『人食いバラ』と本書『黄金孔雀』がミステリ寄りの作品となっている。
ちなみに〈カラサワ・コレクション〉は四冊で刊行が終了しているのだが、実は本書の最後には次回配本である島守俊夫の『宇宙探偵・星に消える子』の広告が載っている。いま現在、刊行された形跡はまったくないので、おそらくは売れ行き不振で頓挫したのだろう。「あっ、きこえる! エメラルドすい星の、地球に近づく音が……」という惹句がなかなかに素敵だったので(笑)、ちょっと気になっていたのだが、なんとも残念なことだ。
いきなり話がそれたが、さて島田一男の『黄金孔雀』である。島田一男のジュヴナイルというだけでレア度は高いが、中身もなかなか他所ではお目にかかれないような代物であった。
こんな話。誕生日を明日に控えた真夜中のこと。小玉博士の一人娘ユリ子は庭の方から聞こえるパタパタという音で目を覚ました。不思議に思って窓を見やると、なんとそこには孔雀の覆面をした怪人の姿が! しかもその孔雀の怪人は自ら「黄金孔雀」と名乗り、ユリ子を守るために現れたのだという。
驚くユリ子であったが、さらにそこへ現れたのが、額に角を生やした不気味な「一角仙人」であった。黄金孔雀に宣戦布告をした一角仙人の笑い声に、ユリ子は恐怖のあまり気を失ってしまう……。

のっけから敵味方の怪人が登場するという派手なオープニングだが、まず驚かされるのはその造形である。
上のカバー絵の右側が敵の親玉「一角仙人」、左に小さく描かれている方が正義の怪人「黄金孔雀」なのだが、典型的な悪人面の一角仙人はいってみれば予想どおりでそれほどの驚きはない。
むしろ注目は正義の怪人「黄金孔雀」である。体に西洋の鎧もどきをつけているのはいいとして、孔雀の覆面がやはり異様。とにかく頭があれではすごい邪魔としか思えないのだが。しかもどういう構造かわからないが、ちゃんと羽も広げるし。
で、このアブノーマルな二人がユリ子に隠された秘密をめぐってユリ子争奪戦を繰り広げるというのが一応メインストーリー。ただし、実はそれだけでは終わらず、さらにはここにユリ子の親友ルミ子とそのお兄さんの名探偵・香月先生(本職は少年少女新聞の編集長)が加わり、三つ巴の展開となるのがなかなか面白い。
他にも黄金孔雀の部下の少年パンド・ランガ、一角仙人の手下・一つ目行者など、個性的なキャラクターが目白押し。そんな彼らの丁々発止のやりとりでラストまで一気に突っ走ってくれる。
なんせ昭和二十五から二十六年にかけて連載された小説である。ツッコミどころは山ほどあるけれど、まあ、それも含めて楽しみながら、古き良き時代の少女活劇小説の世界にどっぷり浸るのがよいだろう。
なお、ミステリとしても予想以上にトリックを使っていたり、怪人の正体なども工夫していたりで、レベルはともかく(笑)、サービス精神にあふれているところは好感度大である。
島田一男には他にもいろいろジュヴナイルを書いているのだが、ううむ、それこそ論創ミステリ叢書あたりでまとめて出してもらえないものだろうか。
〈カラサワ・コレクション〉とは古本を趣味とする唐沢氏が古い少女小説を復刊した選集である。2003年から2004年にかけて四冊刊行されたが、そのうちの西条八十 『人食いバラ』と本書『黄金孔雀』がミステリ寄りの作品となっている。
ちなみに〈カラサワ・コレクション〉は四冊で刊行が終了しているのだが、実は本書の最後には次回配本である島守俊夫の『宇宙探偵・星に消える子』の広告が載っている。いま現在、刊行された形跡はまったくないので、おそらくは売れ行き不振で頓挫したのだろう。「あっ、きこえる! エメラルドすい星の、地球に近づく音が……」という惹句がなかなかに素敵だったので(笑)、ちょっと気になっていたのだが、なんとも残念なことだ。
いきなり話がそれたが、さて島田一男の『黄金孔雀』である。島田一男のジュヴナイルというだけでレア度は高いが、中身もなかなか他所ではお目にかかれないような代物であった。
こんな話。誕生日を明日に控えた真夜中のこと。小玉博士の一人娘ユリ子は庭の方から聞こえるパタパタという音で目を覚ました。不思議に思って窓を見やると、なんとそこには孔雀の覆面をした怪人の姿が! しかもその孔雀の怪人は自ら「黄金孔雀」と名乗り、ユリ子を守るために現れたのだという。
驚くユリ子であったが、さらにそこへ現れたのが、額に角を生やした不気味な「一角仙人」であった。黄金孔雀に宣戦布告をした一角仙人の笑い声に、ユリ子は恐怖のあまり気を失ってしまう……。

のっけから敵味方の怪人が登場するという派手なオープニングだが、まず驚かされるのはその造形である。
上のカバー絵の右側が敵の親玉「一角仙人」、左に小さく描かれている方が正義の怪人「黄金孔雀」なのだが、典型的な悪人面の一角仙人はいってみれば予想どおりでそれほどの驚きはない。
むしろ注目は正義の怪人「黄金孔雀」である。体に西洋の鎧もどきをつけているのはいいとして、孔雀の覆面がやはり異様。とにかく頭があれではすごい邪魔としか思えないのだが。しかもどういう構造かわからないが、ちゃんと羽も広げるし。
で、このアブノーマルな二人がユリ子に隠された秘密をめぐってユリ子争奪戦を繰り広げるというのが一応メインストーリー。ただし、実はそれだけでは終わらず、さらにはここにユリ子の親友ルミ子とそのお兄さんの名探偵・香月先生(本職は少年少女新聞の編集長)が加わり、三つ巴の展開となるのがなかなか面白い。
他にも黄金孔雀の部下の少年パンド・ランガ、一角仙人の手下・一つ目行者など、個性的なキャラクターが目白押し。そんな彼らの丁々発止のやりとりでラストまで一気に突っ走ってくれる。
なんせ昭和二十五から二十六年にかけて連載された小説である。ツッコミどころは山ほどあるけれど、まあ、それも含めて楽しみながら、古き良き時代の少女活劇小説の世界にどっぷり浸るのがよいだろう。
なお、ミステリとしても予想以上にトリックを使っていたり、怪人の正体なども工夫していたりで、レベルはともかく(笑)、サービス精神にあふれているところは好感度大である。
島田一男には他にもいろいろジュヴナイルを書いているのだが、ううむ、それこそ論創ミステリ叢書あたりでまとめて出してもらえないものだろうか。
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うわあ、涼さん、ご存知なんですね。そうなんですよ、この香月先生とルミ子はシリーズ探偵でもあるんですよね。他にも代表作があるので、もう少し読んでみたいなとは思っているんですが。
ちなみにルミ子はオカッパ頭で正解です。ただ、挿絵を見ていても服装以外、ユリ子とルミ子の区別がつかない……。