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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


フレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』(早川書房)

 忙しい割には本を読み続け、こうして日記も書いているわけなので、まだ、本当に忙しいわけではなさそうだ。といってもこの日記を書いているのは仕事で朝帰りの早朝なのだが。

 読了本はフレドリック・ブラウンの『さあ、気ちがいになりなさい』。新装版異色作家短編集の目玉のひとつといってよいのかな。ブラウンは日本でもかなりの訳書が出ているから、さすがにスタージョンほどのありがたみはないにせよ、こうして本書が読めるのもめでたいことである。
 個人的にブラウンを気に入っているのは、この種の奇想的な短編には珍しい、カラッとした明るさと軽やかさを備えていること。別に他の作家が暗いから嫌だというわけではなく、そういうタイプが比較的多いだけに、ブラウンの口当たりが新鮮に感じられるのである。
 本書に関しては、SF色が圧倒的に強いのが特徴(ブラウンの場合はSFというより、ファンタジーといった方が妥当か)。書かれた時代のせいか、あるいは科学批判をはじめとした普遍的かつ定番的なテーマを扱うためか、やや古さを感じさせるのは致し方ないところだが、面白さは決して古びていない。逆にさきほどもいった明るさや軽さがいいアクセントになっていて、オチをより鮮やかさに演出しているように思える。
 お気に入りはまず巻頭の「みどりの星へ」、そして「ぶっそうなやつら」の二つ。過去何度も読んだ作品だが、オチがわかっていてもいつも楽しめる。悪魔との遭遇を語った「おそるべき坊や」はまるで笑い話だがこの馬鹿馬鹿しさが悪くない。そして「さあ、気ちがいになりなさい」は、どう転ぶか予測がつかない展開と、ハッピーなのかアンハッピーなのかわからないラストが秀逸だ。

Something Green「みどりの星へ」
The Dangerous People「ぶっそうなやつら」
Armageddon「おそるべき坊や」
The Waveries「電獣ヴァヴェリ」
Knock「ノック」
The Yehudi Principle「ユーディの原理」
Nothing Sirius「シリウス・ゼロ」
A Town Wanted「町を求む」
The Hat Trick「帽子の手品」
Letter to a Phoenix「不死鳥への手紙」
Cry Silence「沈黙と叫び」
Come and Go Mad「さあ、気ちがいになりなさい」

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Comments

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あらあら、そういうことでしたか。
こちらこそ早合点したみたいで失礼!
ではレビュー、楽しみにしております。

Posted at 01:12 on 10 02, 2007  by sugata

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馬鹿ですね、私は。
「レビュー」って『霧の壁』のレビューのことなんですが、
書いたもののまだ推敲している最中だった。
相当のフライングですね。
『霧の壁』のレビューは明日公開の予定です。
その時またよろしく。

Posted at 04:15 on 10 01, 2007  by じっちゃん

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おお、ブラウンがお好みでしたか。
私ももちろん好きな作家ですが、読了本は似たようなもので、さすがに『火星人ゴーホーム』は読んでますが、『シカゴ・ブルース』とかはもう十年以上も積ん読です(苦笑)。なんというか、ミステリにはまった時点ですでに多数の著作があったために、ついついいつでも読めるかなと、後回しにしてしまった口ですね。
ところでレビューを拝見しましたが、『73光年の妖怪』とはこれまた渋い。実はコレ、私のブラウン・デビュー作です。ン十年ほど前に新刊書店でたまたま買ったやつですが、とにかく知能によるバトルというのがすごく印象的で、これ以後、「理屈をちゃんとつけたうえでモンスターを倒す」という設定に、むちゃくちゃ惹かれるようになりました(笑)。

あと、リンク張らせていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。

Posted at 16:38 on 09 30, 2007  by sugata

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フレドリック・ブラウンは私のお気に入りの作家です。
といっても、それほど沢山読んでいるわけではありませんが。
そういえば、フレドリック・ブラウンに関してはどんな本を読んでいるだろう?
『発狂した宇宙』『火星人ゴーホーム』『通り魔』『未来から来た男』『73光年の妖怪』『悪夢の五日間』くらいでしょうか。それからつい最近『霧の壁』を読み終えました(ブログにレビューを載せていますので、よろしければ一度覗いてください)。
奇抜な設定とストーリーテリングでとにかく面白く読ませる職人芸の持ち主ですよね。なのに日本では一部を除いて著書が手に入りにくい状態になっている。ちょっと残念です。

Posted at 12:22 on 09 30, 2007  by じっちゃん

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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