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R・D・ウィングフィールド『冬のフロスト(下)』(創元推理文庫)
R・D・ウィングフィールドの『冬のフロスト』下巻を読了。
デントン市内で起きた数々の事件は未だほとんどが未解決。マレット署長からは経費の節約と逮捕率の向上を口やかましく言われ続けるなか、フロスト警部は部下モーガンの失敗をかばいつつ、なんとか捜査を進めている。
そのなかで最後まで混迷を極めるのが、悪質さではピカイチの少女誘拐事件と売春婦殺害事件。ついには女性刑事を使った囮捜査を開始するが、そこでまたもやモーガンが痛恨のミスを犯し、デントン署はは最大のピンチにみまわれる……。

まずは安定した出来映えで、十分にフロストワールドを楽しむことができた。
パターン自体はいつものとおりで、ミステリとしての仕掛けは特別大きなものもないのだけれど、複数の事件を同時進行させて、その絡み具合やドタバタを楽しむというスタイル。相変わらずプロットをしっかり作り込み、ストーリーにきちんと落とし込んでいるのはさすがである。
このあたりは初期の作品より後の作品ほどこなれている印象がある。
そしてそれを彩るキャラクターの魅力的なことよ。マレット署長とフロストのやりとりはいつもどおり笑えるし、今回はフロストから「芋兄ちゃん」と呼ばれるフロスト以下のダメ刑事・モーガンが大活躍。
とはいえ本作では正直、やりすぎの嫌いもないではなく、ここまでダメな刑事をかばうフロストの心情がもうひとつ伝わりにくいのが難点か。
フロストシリーズの魅力として、普段は勘に頼った行き当たりばったりの捜査しかできない下品オヤジのフロストが、ここぞというところでは自分を押し通し、人間味を見せるところがある。やはり根本は人間賛歌なのである。そこが読者の共感を呼びにくいエピソードになってしまうと、素直に笑えなくなってしまう難しさ。
本作ではモーガン痛恨のミスが、まさにその状況を生んでしまい、その部分では不満が残るところだ。
もしかすると次作というか最終作『フロスト始末』でフォローや違った展開があるかもしれないので、そこは期待したいところである。
ともあれそんな気になる点も含みつつ、全体では十分に合格点。さあ、次はいよいよ最終作『フロスト始末』か。
デントン市内で起きた数々の事件は未だほとんどが未解決。マレット署長からは経費の節約と逮捕率の向上を口やかましく言われ続けるなか、フロスト警部は部下モーガンの失敗をかばいつつ、なんとか捜査を進めている。
そのなかで最後まで混迷を極めるのが、悪質さではピカイチの少女誘拐事件と売春婦殺害事件。ついには女性刑事を使った囮捜査を開始するが、そこでまたもやモーガンが痛恨のミスを犯し、デントン署はは最大のピンチにみまわれる……。

まずは安定した出来映えで、十分にフロストワールドを楽しむことができた。
パターン自体はいつものとおりで、ミステリとしての仕掛けは特別大きなものもないのだけれど、複数の事件を同時進行させて、その絡み具合やドタバタを楽しむというスタイル。相変わらずプロットをしっかり作り込み、ストーリーにきちんと落とし込んでいるのはさすがである。
このあたりは初期の作品より後の作品ほどこなれている印象がある。
そしてそれを彩るキャラクターの魅力的なことよ。マレット署長とフロストのやりとりはいつもどおり笑えるし、今回はフロストから「芋兄ちゃん」と呼ばれるフロスト以下のダメ刑事・モーガンが大活躍。
とはいえ本作では正直、やりすぎの嫌いもないではなく、ここまでダメな刑事をかばうフロストの心情がもうひとつ伝わりにくいのが難点か。
フロストシリーズの魅力として、普段は勘に頼った行き当たりばったりの捜査しかできない下品オヤジのフロストが、ここぞというところでは自分を押し通し、人間味を見せるところがある。やはり根本は人間賛歌なのである。そこが読者の共感を呼びにくいエピソードになってしまうと、素直に笑えなくなってしまう難しさ。
本作ではモーガン痛恨のミスが、まさにその状況を生んでしまい、その部分では不満が残るところだ。
もしかすると次作というか最終作『フロスト始末』でフォローや違った展開があるかもしれないので、そこは期待したいところである。
ともあれそんな気になる点も含みつつ、全体では十分に合格点。さあ、次はいよいよ最終作『フロスト始末』か。
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