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 江戸川乱歩の『明智小五郎事件簿VIII 「人間豹」』を読む。おなじみ明智小五郎の登場作品を事件発生順に並べたシリーズだが、これでようやく八巻目。通俗長篇スリラーのタームに入ったせいか、毎月読んでいるとさすがにちょっと飽きてきてしまい、前巻の「吸血鬼」から三ヶ月ほど間をあけての再開である。

 裕福な家庭に生まれ育った神谷青年の最近のお目当ては、カフェの女給・弘子。今日もカフェに出向いてはアルコールと会話を愉しんでいたが、そこへ別のお客・恩田から弘子に指名が入る。いったんは拒否した神谷と弘子だったが、そのお客のただならぬ風貌——巨大な眼と長い舌——に気圧され、弘子は仕方なく相手を務めることにする。
 その日の帰り道。恩田を見かけた神谷は思わず後をつけるが、その途中で恩田が犬を惨殺するところを目の当たりにし、あまりのショックに神谷は体調を崩してしまう。
 ようやく復調し、久しぶりにカフェへ出向いた神谷。しかし、弘子は行方不明となっており、神谷は恩田が怪しいとにらみ、以前にあとをつけた恩田の家を訪問する。ところがそこで恩田の父親に監禁され、しかも弘子が恩田によって惨殺される現場を目撃する……。

 明智小五郎事件簿VIII

 プロローグ的な事件でも相当なものだが、本作はこのあとも恩田=人間豹の暴れっぷりがたっぷりと描かれ、加えて明智小五郎が登場する中盤以降では、明智の妻、文代をめぐって丁々発止の闘いが繰り広げられる。
 とにかく乱歩の通俗スリラーもくるところまできたという感じである。特に文代が恩田につかまってからの展開は本作のメインイベント。裸で熊の着ぐるみに入れられ、恩田に鞭で打たれたり、本物の虎に襲われたりと、エログロ趣味も濃厚。
 もちろんそんなお話しなのでミステリ的な興味は非常に薄く、アクションとスリラー、エログロの三本柱で読者をワクワクハラハラドキドキさせればそれでよいという、まさに娯楽小説のど真ん中のような作品といえる。

 管理人的にはこれまでの感想でも書いてきたように、この路線でも全然OKなのだが、ミステリ的な仕掛けが薄いこと、ストーリーが波瀾万丈に見えて実は繰り返しが多く単調だったり、そちらのほうが残念だった。
 子供向けを含め、これが三〜四回目ぐらいの読了になるのだが、子供の頃はそれなりにドキドキして読んだものの、いまは物足りなさが先に立つ。乱歩の通俗長篇スリラーでも落ちるほうだろう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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