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 シオドア・マシスンの『悪魔とベン・フランクリン』を読む。
 マシスンの邦訳はほかに創元推理文庫の『名探偵群像』があるけれども、こちらはアレクサンダー大王、レオナルド・ダ・ヴィンチ、リヴィングストン博士、クック艦長、ナイチンゲールといった、歴史上の偉人を探偵役にした異色の短編集である。
 で、本作はその偉人探偵シリーズの長編版。主人公ベン・フランクリンはアメリカの政治家であり、物理学者でもあるが、よく知られているのは、何といっても凧を使って雷が電気であることを証明した実験のエピソードだろう。
 ただ、わが国ではそんな学者としてのイメージが強いのだが、本国アメリカではむしろ社会活動や政治活動を通してその人間性が称えられ、アメリカ合衆国建国の父の一人として人気が高い人物である。

 悪魔とベン・フランクリン

 ではストーリー。
 舞台は1734年のフィラデルフィア。地元で新聞を発行しているベン・フランクリンは、町の人々からも尊敬を集める人物だったが、あるとき社説で町の大立者マグナスの暴虐ぶりを批判し、マグナスを激怒させてしまう。
 呪いをかけるとまで脅されたものの、まったく意に介さないベン。しかし、やがてベンの周囲にさまざまな圧力がかかる。そして遂には使用人が行方不明となり、さらにはその甥が死体となって殺害されてしまう……。

 歴史物、しかもオカルト趣味ということもあって、掴みは悪くない。
 主人公が実在の人物とはいえ、やや出来過ぎのキャラクターではあるのだが、そのほかの人物はなかなかクセもあって特徴的だし、当時のアメリカの小都市の雰囲気も伝わってきてリーダビリティはなかなか高い。

 基本的にはもちろん殺人事件が中心。したがって犯人当てが謎の中心とはなるのだが、いわゆる本格にありがちな退屈さとは無縁。時代ゆえにオカルト趣味がうまく活かされている(恐怖を煽るという意味ではなく、伝説や超自然現象を普通に信じるという設定が生きているという意味で)。
 終盤も西部劇を思わせる対決から、“名探偵、町中の人間を集めて「さて」といい”のラスト。そして劇的な犯人の最期と怒涛の展開である。これが長編第一作のシオドア・マシスンだが、ストーリーを盛り上げる技術はなかなかのものだろう。

 謎解きの要素が少し早めに種明かしされてしまうのがやや惜しいけれど、エンターテインメントとしては十分楽しめる一冊。ちょっと変わった本格ミステリを読みたい人はぜひどうぞ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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