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 笹沢左保の『霧に溶ける』を読む。著者の本格ミステリでは代表作として知られる一作である。

 まずはストーリー。
 ミス全国OLコンテストの最終予選に残った五人の女性。しかし、最終審査を前にして、彼女たちには怪しい脅迫や不審な事故が次々と発生する。果たしてライバルたちを蹴落とそうとする五人の中の誰かの仕業なのか? そしてついには殺人事件が発生する。
 事件の捜査に当たった警察は、被害者がコンテストの候補者であることに気づくが、殺人事件はそれだけでは終わらなかった……。

 霧に溶ける

 ああ、これはよくできている。世評も宜なるかな。
 『招かれざる客』もそうだったが、初期の笹沢左保作品は本格に対して相当な意気込みがあったようで、本作もまたトリックや仕掛けが目白押しである。
 連続殺人それぞれに密室やアリバイなどのトリックが用いられ、これらの謎に『招かれざる客』で活躍した倉田警部補が再び挑んでいく。ストーリー自体はごくごくオーソドックスに警察の捜査で進んでいくのだが、不可能犯罪の連発で畳み掛けるので、まったく退屈することがない。

 そして、これまた『招かれざる客』がそうであったように、本作も実はトリックひとつひとつがどうではなく、事件全体の構図やプロットが魅力的なのである。この真相があればこそ、トリックの多さも生きるというものである。
 実際にこんな事件があったら、おそらく迷宮入りは間違いないと思えるぐらい真相は複雑なため、少々やりすぎの感無きにしもあらずだが、ここは著者の心意気を買うべきであろう。

 ミス・コンテストの五人の候補者たちのキャラクターの描き方も面白い。ミスコンの最終審査に残るぐらいだからみな美貌の持ち主。当然、男性関係もそれなりに賑やかなのはいいとしても、不倫あり酒乱ありチンピラとの腐れ縁ありと、全体的には性格に難ありの者ばかり。
 その時代のモラルや女性観などをかなり誇張しつつ、さらにはあえて歪めて描いているとは思うのだが、この辺の壊れっぷりはやはり興味深く読めるところである。

 と、ここまで褒めておいてなんだが、 実は感心しないところもないではない。
 それはこの犯罪が行われることによる結果、犯人にはメリットもあるが、けっこうなデメリットもあるという点(しかもちょっと考えただけでも大きく二つはある)。それぐらいは犯人も気づいてほしいところで、このあたりをもう少し上手く消化できていれば、より見事な作品になったことだろう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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