- Date: Sat 07 10 2017
- Category: 国内作家 笹沢左保
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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笹沢左保『人喰い』(中公文庫)
笹沢左保の『人喰い』を読む。著者の長編第四作にして第14回日本推理作家協会賞受賞作品。
こんな話。
本多銃砲火薬店に勤める花城由記子が妹・佐紀子に遺書を残して失踪した。由記子は社長の息子、本田昭一と付き合っていたが、本田家の反対にあい、しかも会社でも執拗な嫌がらせを受けていたのだ。そんな二人が選択したのは心中という手段だったが、発見されたのは昭一の遺体だけだった。
由記子の生死がはっきりしないまま、本多銃砲火薬店での爆破事件、そして殺人事件が発生するにおよび、ついに由記子は殺人犯として指名手配を受ける。佐紀子は姉の無実を信じ、恋人とともに調査を始めるが……。

笹沢左保の初期長編は力作ぞろい、特に本格魂にあふれるものが多いということで、そのあたりを中心に読み進めているのだが、本作『人喰い』もまたその期待を裏切らない傑作である。
これまで読んだのは『招かれざる客』、『霧に溶ける』だが、これらは警察の捜査を中心に物語が進んでいたのに対し、本作は容疑者の妹・佐紀子が調査に乗り出す素人探偵もの。その分だけサスペンス要素が強めなのが特徴で、姉の由記子は果たして被害者なのか、それとも犯人なのか、あるいは別の真相があるのか、その興味で引っ張りながら物語を進めていくのがよろしい。
トリックの盛り込み方は先の二作ほど賑やかではないけれども、物語の盛り上げ方などを加味すると、個人的には本作の方が好みである。
トリックの盛り込み方が云々と書いたように、ひとつひとつのネタはやや厳しい。
ただ、これは先の二作も似たようなもので、笹沢作品では、そういう物理トリックよりも意外な事件の真相が見どころである。叙述トリックというほどのものではないが、事件の様相をガラッと変えてみせる技術は相変わらず冴えている。
まあ、登場人物が限られているので、今のミステリファンであればヤマ勘でも犯人は当てることも可能だが、なんというか、こういう書き方をするとちょっと語弊はあるけれども、いわゆる火曜サスペンス劇場とか、そういうサスペンスドラマのお手本のような作品といってもいいだろう。
タイトルの『人喰い』の意味については、終盤で犯人の言葉によって明らかになるのだが、この犯人の性格付けと合わせてなかなかに興味深く、微妙にイヤーな読後感を残すところも好み。この暗さもまた笹沢作品の魅力であろう。
ともあれ笹沢作品の良さはだいぶ実感できてきたので、今後ももう少し読み進めてみたい。
こんな話。
本多銃砲火薬店に勤める花城由記子が妹・佐紀子に遺書を残して失踪した。由記子は社長の息子、本田昭一と付き合っていたが、本田家の反対にあい、しかも会社でも執拗な嫌がらせを受けていたのだ。そんな二人が選択したのは心中という手段だったが、発見されたのは昭一の遺体だけだった。
由記子の生死がはっきりしないまま、本多銃砲火薬店での爆破事件、そして殺人事件が発生するにおよび、ついに由記子は殺人犯として指名手配を受ける。佐紀子は姉の無実を信じ、恋人とともに調査を始めるが……。

笹沢左保の初期長編は力作ぞろい、特に本格魂にあふれるものが多いということで、そのあたりを中心に読み進めているのだが、本作『人喰い』もまたその期待を裏切らない傑作である。
これまで読んだのは『招かれざる客』、『霧に溶ける』だが、これらは警察の捜査を中心に物語が進んでいたのに対し、本作は容疑者の妹・佐紀子が調査に乗り出す素人探偵もの。その分だけサスペンス要素が強めなのが特徴で、姉の由記子は果たして被害者なのか、それとも犯人なのか、あるいは別の真相があるのか、その興味で引っ張りながら物語を進めていくのがよろしい。
トリックの盛り込み方は先の二作ほど賑やかではないけれども、物語の盛り上げ方などを加味すると、個人的には本作の方が好みである。
トリックの盛り込み方が云々と書いたように、ひとつひとつのネタはやや厳しい。
ただ、これは先の二作も似たようなもので、笹沢作品では、そういう物理トリックよりも意外な事件の真相が見どころである。叙述トリックというほどのものではないが、事件の様相をガラッと変えてみせる技術は相変わらず冴えている。
まあ、登場人物が限られているので、今のミステリファンであればヤマ勘でも犯人は当てることも可能だが、なんというか、こういう書き方をするとちょっと語弊はあるけれども、いわゆる火曜サスペンス劇場とか、そういうサスペンスドラマのお手本のような作品といってもいいだろう。
タイトルの『人喰い』の意味については、終盤で犯人の言葉によって明らかになるのだが、この犯人の性格付けと合わせてなかなかに興味深く、微妙にイヤーな読後感を残すところも好み。この暗さもまた笹沢作品の魅力であろう。
ともあれ笹沢作品の良さはだいぶ実感できてきたので、今後ももう少し読み進めてみたい。
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まいど〜!(笑)