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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ『熊と踊れ(上)』(ハヤカワ文庫)

 アンデシュ・ルースルンドとステファン・トゥンベリの共著、『熊と踊れ』をとりあえず上巻まで読了。
 昨年の「このみす」と「ミス読み」では1位、そのほかのランキングでも2位と、各種ミステリランキングで上位を総なめにした作品である。

 著者は二人とも馴染みのない名前だったが、アンデシュ・ルースルンドの方は日本初紹介というわけではなく、ベリエ・ヘルストレムとの共著で、グレーンス警部&スンドクヴィスト警部補シリーズがRHブックス・プラスや角川文庫で翻訳がある。残念ながら日本ではまったくブレイクしなかったようだが、角川文庫で出た『三秒間の死角』はなかなかの力作のようだ。
 そのルースルンドがコンビをステファン・トゥンベリに変えて書いたのが、本書というわけである。

 こんな話。レオ、フェリックス、ヴィンセントは粗暴な父によって崩壊した家庭で育った三人兄弟。父に対する恨みもあり、より固い絆でつながった三人もやがて独立したが、レオの発案で軍の倉庫から大量の武器を盗み出し、幼馴染のヤスペル、レオの恋人・アンネリーとも協力して銀行強盗を決行する。
 そして最初の銀行襲撃。計画そのものはなんとか成功したものの、成果は必ずしも満足できる水準ではなく、レオはさらなる計画を立てる。一方、市警のブロンクス警部はあまりに鮮やかな手口から、プロの仕業と睨んで捜査を開始する……。

 熊と踊れ(上)

 まあ、半分しか読んでいないのに、こんなこと断言していいのか不安だが、これは確かに傑作だわ。上巻だけでもかなりの満足感。
 三人の兄弟は実に辛い幼少時代を送っており、そういうトラウマを背負いつつ、銀行強盗を実行する。幼馴染のヤスペルこそ軍人上がりだが、犯罪に関しては皆アマチュアである。当然ながらさまざまなリスクもあるし、ときには揉め事もあるのだが、長男のレオはそれらを補うべく、徹底的に計画を練り込み、そして仲間をまとめていく。さらにはこれを追うブロンクス警部のドラマも気になるところが多い。

 これらの過程がみっちり書き込まれているので、とにかく引き込まれる。このあと、どういう展開、そしてラストが待ち受けているのか実に楽しみである。

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Comments

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きみやすさん

そうなんですよね、ここまで面白い犯罪小説がまさか実話とは思わなかったです。
ちょうど今日、下巻も読み終えたので、近日中に感想アップします。

Posted at 21:07 on 10 17, 2017  by sugata

Edit

こんばんは~。

この作品めちゃくちゃ面白いですね。
実話をモデルにしている点だけでも、かなりの衝撃でした。

Posted at 19:40 on 10 17, 2017  by きみやす

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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