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 アンデシュ・ルースルンドとステファン・トゥンベリによる合作『クマと踊れ』読了。

 レオ、フェリックス、ヴィンセントに幼なじみのヤスペルを加えた四人は、さらに銀行強盗を続けるが徐々に綻びが見え始め、不協和音が流れ出す。そんななか、彼らが最後に計画したのは三ヵ所同時の銀行襲撃であり、しかも陽動作戦として駅で爆弾を使うことを企てるのだが……。

 ううむ、下巻の粗筋ではなく、上巻終盤のまとめになってしまった(苦笑)。まあ、この爆弾を使うことで、チームの亀裂が本格的になり、そこから思いがけない展開が待ち受けというのが下巻の流れだ。

 熊と踊れ(下)

 本作は、 アマチュアによる銀行強盗計画という犯罪小説としての魅力、三兄弟の絆やその父との確執を描くヒューマンドラマとしての魅力、大きく二つの面があると思うのだが、そのバランスが絶妙である。
 二つの面はそのままストーリー上でも動と静の役割をもたされており、実にいいタイミングで物語に緩急をつける。さらにはレオの恋人の苦悩、父子の会話から炙り出される過去の忌まわしき記憶、事件を追うブロンクス警部の抱える闇などが交差し、これらがストーリーの効果的なアクセントにもなっており、非常にリーダビリティが高い。特に下巻は物語がどう転ぶか予測がつきにくく、実にスリリングだ。
 北欧のミステリというと、もっぱら社会問題や家庭問題をテーマにした警察小説というイメージがあるけれど、こういう骨太の犯罪小説もあるのかと感心。今までのイメージを吹き飛ばしてくれることは間違いない。

 人物描写も巧い。主要なキャラクターはこの分量にして十人にも満たない程度で、その誰もが非常に個性が際立っている。
 なかでも主人公格の長男レオ、そしてその父のキャラクターは突出している。父は暴力的でエキセントリックなところもあるが、その反面、家族の血を非常に重視する男である。しかし、その家族は、正にその血のために地獄を見る。
 レオはそんな父から弟たちを守ろうとするが、その彼もまた、血を尊び、知らず知らず父の道を歩み、暴力にのみ込まれてゆく。こういったレオと父の関係性、一番まともだったはずのレオが次第にズレていくあたりなどはなかなか達者なものだ。
 物語はやや意外に思えるほど静かなクライマックスを迎えるが、ラストのラストでレオの持つ闇を再認識させられ、なんとも言えない余韻を残す。お見事。

 ひとつだけ注文をつけるとすれば、ブロンクス警部のドラマ。かなりやりすぎの感が強く、しかも消化不良。特にあのエピソードだけは作り物感が非常に強いのが気になった。まあ、好みもあるかな。

 ちなみに本作は事実を元にした小説である。かなり破天荒な事件を扱ってはいるが、登場人物や事件もかなり忠実に再現しているらしい。
 それだけでも驚きではあるのだが、まあ、でもこれぐらいなら別に珍しい話はない。さらに驚いたのは、本作に登場する三兄弟が、なんと作者の一人、ステファン・トゥンベリの実の兄弟だということだ。つまり、本当は四兄弟で、作者のステファンだけが強盗に加担しなかったのだ。
 事件や人物の詳細な描写の数々は、こういうところに理由があったのだろう。

 なお、本作の続編『En bror att dö för』も既に今年、発売されているようだ。引き続きこの兄弟の物語なのか、あるいは消化不良気味だったブロンクス警部の物語になるのか、その辺は不明だが邦訳を楽しみに待ちたい。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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