- Date: Sat 28 10 2017
- Category: 国内作家 笹沢左保
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
- Response: Comment 6 Trackback 0
笹沢左保『空白の起点』(日文文庫)
最近のマイブーム、笹沢左保の『空白の起点』を読む。ポール・ブリッツさん、根岸鴨さんがオススメしてくれていたが、確かにこれも良作であった。
こんな話。大阪発の急行列車「なにわ」が東京をめざし、真鶴を通過しようとしていたときのこと。乗客の一人、小梶鮎子が海岸の崖から男が墜落するところを車内から目撃した。ところが東京駅に着いた鮎子は、鉄道公安官から、墜落した男が自分の父・美智雄であったことを知らされる。
たまたま同じ列車に乗り合わせていた保険会社の事故調査員・新田純一は、その偶然が気にかかり、保険の加入状況を調べると、最近、高額の保険に加入したことが判明。事故の裏に何かあるのではないかと考えた新田は引き続き、調査を続行するが……。

『招かれざる客』、『霧に溶ける』、『人喰い』とタイプは異なるが、本作もまたなかなかの出来である。
一言で言ってしまうと、二時間サスペンスドラマ風の展開で、主人公の新田が調査を進めるうち、被害者の周囲には複雑な人間関係があることがわかり、そこからある容疑者が浮かび上がる。ところがその容疑者が自殺を遂げるあたりから、逆に事件の様相がますます怪しくなっていく。後半は犯人の見当もつきはじめ、アリバイ崩しが中心になっていくが、ラストではそれにとどまらない意外な真相が明らかになる。
雰囲気は確かに二時間サスペンスドラマ風ではあるし、そこまで派手な仕掛けがあるというわけではないのだが、予想を半歩ほど上回っていく展開が心憎く、しっかりしたプロットをうまくストーリーに乗せているといった印象だ。
特に動機についてはよく練られており、単なる二時間サスペンスドラマに終わらない魅力がある。
気になったのは、登場人物の人物造形か。ストーリーの軽快さに比較すると、主人公の新田などは作品にそぐわない暗さであり、事件の様相に絡めて物語に深みを出そうとしたとは思うのだが、終盤で明らかになる事実には、あまりの唐突さにちょいとひいてしまうぐらいである。
かたやヒロイン格の女性は、新田とのロマンスや三角関係といった適度な読者サービス要員にもなっており(この辺も二時間サスペンスドラマっぽい)、新田とのバランスを考えると少々座りが悪い感じ。まあ、ここは個人的な好みも入っているので。そこまで気にするほどでもないけれど。
というわけで、二時間サスペンスドラマ風とはいっても、非常に上質な二時間サスペンスドラマ。リーダビリティも高く、まずは安心してオススメできる一作である。
こんな話。大阪発の急行列車「なにわ」が東京をめざし、真鶴を通過しようとしていたときのこと。乗客の一人、小梶鮎子が海岸の崖から男が墜落するところを車内から目撃した。ところが東京駅に着いた鮎子は、鉄道公安官から、墜落した男が自分の父・美智雄であったことを知らされる。
たまたま同じ列車に乗り合わせていた保険会社の事故調査員・新田純一は、その偶然が気にかかり、保険の加入状況を調べると、最近、高額の保険に加入したことが判明。事故の裏に何かあるのではないかと考えた新田は引き続き、調査を続行するが……。

『招かれざる客』、『霧に溶ける』、『人喰い』とタイプは異なるが、本作もまたなかなかの出来である。
一言で言ってしまうと、二時間サスペンスドラマ風の展開で、主人公の新田が調査を進めるうち、被害者の周囲には複雑な人間関係があることがわかり、そこからある容疑者が浮かび上がる。ところがその容疑者が自殺を遂げるあたりから、逆に事件の様相がますます怪しくなっていく。後半は犯人の見当もつきはじめ、アリバイ崩しが中心になっていくが、ラストではそれにとどまらない意外な真相が明らかになる。
雰囲気は確かに二時間サスペンスドラマ風ではあるし、そこまで派手な仕掛けがあるというわけではないのだが、予想を半歩ほど上回っていく展開が心憎く、しっかりしたプロットをうまくストーリーに乗せているといった印象だ。
特に動機についてはよく練られており、単なる二時間サスペンスドラマに終わらない魅力がある。
気になったのは、登場人物の人物造形か。ストーリーの軽快さに比較すると、主人公の新田などは作品にそぐわない暗さであり、事件の様相に絡めて物語に深みを出そうとしたとは思うのだが、終盤で明らかになる事実には、あまりの唐突さにちょいとひいてしまうぐらいである。
かたやヒロイン格の女性は、新田とのロマンスや三角関係といった適度な読者サービス要員にもなっており(この辺も二時間サスペンスドラマっぽい)、新田とのバランスを考えると少々座りが悪い感じ。まあ、ここは個人的な好みも入っているので。そこまで気にするほどでもないけれど。
というわけで、二時間サスペンスドラマ風とはいっても、非常に上質な二時間サスペンスドラマ。リーダビリティも高く、まずは安心してオススメできる一作である。
- 関連記事
-
-
笹沢左保『六本木心中』(角川文庫) 2017/12/30
-
笹沢左保『どんでん返し』(祥伝社ノン・ポシェット) 2017/11/04
-
笹沢左保『空白の起点』(日文文庫) 2017/10/28
-
笹沢左保『人喰い』(中公文庫) 2017/10/07
-
笹沢左保『霧に溶ける』(光文社文庫) 2017/09/24
-
おお、『不連続殺人事件』! いいですねぇ。
偶然ですが、実は私も最近、なぜか読み直したくなって、ちょうど家の中を探していたところです。前に読んだのは学生時代なので、もう内容もほとんど覚えていませんから、けっこう新鮮に読めそうで(苦笑)。