- Date: Sat 04 11 2017
- Category: 国内作家 笹沢左保
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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笹沢左保『どんでん返し』(祥伝社ノン・ポシェット)
笹沢左保の『どんでん返し』を読む。最近読んでいた初期長編から離れて、これは中期に刊行された短編集である。まずは収録作。
「影の訪問者」
「酒乱」
「霧」
「父子(おやこ)の対話」
「演技者」
「皮肉紳士」

どんでん返しがテーマの短編集。しかも全編、二人の登場人物の会話だけで構成されており、なかなか技巧的でアグレッシブな試みである。
ただ、技巧的ではあるし、どれもきちんとオチを工夫してあるのだけれど、いかんせん会話だけだといろいろ制限が多くなり、どうしても先が予想しやすいのが惜しまれる。それでも何作かはこちらの予想を超えるものもあって、まずまず悪くない短編集である。
なお、タイトルにまで“どんでん返し”とつけるのは、いくら何でもハードルを上げすぎじゃないかな(苦笑)。
以下、作品ごとの感想など。
「影の訪問者」はかつて婚約していた男女の会話。深夜に突然やってきた女の不審な様子から、男が推理を披露して……という物語。会話ミステリー(そんなジャンルがあるかどうかは知らんが)の基本系みたいな作品である。それだけに予想されやすいところはあるのだが、サスペンスも高く、きちんとまとまった佳作。一幕ものの芝居みたいな雰囲気もよい。
その基本形を捻ってあるのが「酒乱」。五十代の夫婦の会話だが、昔に起こったと思しき事件を二人で回想していくのだが、余韻も含めて本書のピカイチ。
「霧」は心中を図ろうとする若い夫婦の会話。これは単純で驚きも少なくいまひとつ。
「父子の対話」は「酒乱」に次ぐ出来の良さ。売れっ子弁護士になった息子とその父の会話だが、御都合主義が一ヶ所あるのはいただけないが、会話だけでこれだけの豊穣なストーリーを展開させる手腕が見事。
「演技者」は夫の殺人を企む女優とその不倫相手の会話で始まり、後半は女優と捜査にあたる刑事の会話で締める。プロットに無理があり、本作だけ会話も都合三人で成り立たせているため、印象も弱くなってしまった。
「皮肉紳士」は空港へ向かうタクシーの中で、大学教授に事件の相談をする刑事の話。これは会話ミステリというより安楽椅子もののアレンジ。なので会話ミステリとしての面白さには欠けるのが残念。
「影の訪問者」
「酒乱」
「霧」
「父子(おやこ)の対話」
「演技者」
「皮肉紳士」

どんでん返しがテーマの短編集。しかも全編、二人の登場人物の会話だけで構成されており、なかなか技巧的でアグレッシブな試みである。
ただ、技巧的ではあるし、どれもきちんとオチを工夫してあるのだけれど、いかんせん会話だけだといろいろ制限が多くなり、どうしても先が予想しやすいのが惜しまれる。それでも何作かはこちらの予想を超えるものもあって、まずまず悪くない短編集である。
なお、タイトルにまで“どんでん返し”とつけるのは、いくら何でもハードルを上げすぎじゃないかな(苦笑)。
以下、作品ごとの感想など。
「影の訪問者」はかつて婚約していた男女の会話。深夜に突然やってきた女の不審な様子から、男が推理を披露して……という物語。会話ミステリー(そんなジャンルがあるかどうかは知らんが)の基本系みたいな作品である。それだけに予想されやすいところはあるのだが、サスペンスも高く、きちんとまとまった佳作。一幕ものの芝居みたいな雰囲気もよい。
その基本形を捻ってあるのが「酒乱」。五十代の夫婦の会話だが、昔に起こったと思しき事件を二人で回想していくのだが、余韻も含めて本書のピカイチ。
「霧」は心中を図ろうとする若い夫婦の会話。これは単純で驚きも少なくいまひとつ。
「父子の対話」は「酒乱」に次ぐ出来の良さ。売れっ子弁護士になった息子とその父の会話だが、御都合主義が一ヶ所あるのはいただけないが、会話だけでこれだけの豊穣なストーリーを展開させる手腕が見事。
「演技者」は夫の殺人を企む女優とその不倫相手の会話で始まり、後半は女優と捜査にあたる刑事の会話で締める。プロットに無理があり、本作だけ会話も都合三人で成り立たせているため、印象も弱くなってしまった。
「皮肉紳士」は空港へ向かうタクシーの中で、大学教授に事件の相談をする刑事の話。これは会話ミステリというより安楽椅子もののアレンジ。なので会話ミステリとしての面白さには欠けるのが残念。
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おお、やはりこの二つは出来がいいようですね。
ちなみに『同行者の』文庫版タイトルは『悪魔の道連れ』のようです。ネットで見ると確かに出来はいまひとつみたいなのですが、ううむ、ちょっと気になります。