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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ミステリベストテン比較2018年度版

 この一週間ほどでだいたいランキング本も出揃ったようなので、一昨年からやっている各誌ベストテンのランキング比較(ただし海外部門のみ)を今年もやってみる。
 ルールは『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」、『週刊文春』の「ミステリベスト10」、宝島社の『このミステリがすごい!』の各ランキング20位までを対象に平均順位を出すという、いたってシンプルなもの。ちなみに講談社の「文庫翻訳ミステリー・ベスト10」と『本格ミステリ・ベスト10』は扱う範囲がそれぞれ文庫のみ、本格のみと限定されているので取扱対象外。
 また、ランキングによって対象となる刊行期間が異なるため(ミステリマガジンのみ10月1日から9月31日、他は11月1日から10月30日)、1つしかランクインしていないものは省き、ふたつのランキングにランクインしているもののみ取り上げている。
 ただ、1つしかランクインしていないものでも、それがむしろランキングの個性ということにもなるので、参考資料としてそちらも並べてある。
 ではランキングどうぞ。

2018年ランキング比較

 昨年、一昨年と同様、今年もまた上位は似たような顔ぶれで、やはりそれほど面白くない結果となってしまった。基本的にはR・D・ウィングフィールの『フロスト始末』と陳浩基『13・67』の一騎打ちの様相で、これにケイト・モートン『湖畔荘』、ビル・ビバリー『東の果て、夜へ』が絡むという構図である(例によってミスマガが対象期間を早めすぎているので、ここだけ『13・67』は入っていないけれど)。

 そのかわり、というわけでもないのだが、下位は思った以上にバラツキが見られ、各紙の個性は上位より下位の作品で見る方が楽しい。
 たとえば『週刊文春』の「ミステリベスト10」は相変わらず知名度や話題作が好物で、大物、ベテランに甘い。権威主義的ともいう。キングやディーヴァーあたりはどんな作品でも必ずランクインするし、ディヴァインやエリス・ピーターズがいつもより落ちる出来なのにしっかりランクインするのも文春っぽい。
 「このミス」はSFから古典まで間口が広いのだけれど、裏を返せば、奇を衒う目立ちたがりの投票が多いともいえる。ただ、こちらが知らない作品やノーマークだった作品がが割と多く入ってくるので参考にはなる。
 「ミスマガ」はランキング云々より、頼むから対象期間を他と合わせてくれとしかいいようがない(笑)。昨年のランキングで上位だった『傷だらけのカミーユ』や『煽動者』、『その雪と血を』あたりが今年に入っていても、やはり不自然極まりない。あと、なぜか「ミスマガ」のランキングは古典が異常に弱いのも特徴である。まあ、早川書房はこの数年クラシックの出版についてはかなり減少しているので、それがそのまま反映されている感じではある。

 ということで検証終了。あとは実際に気になる本を読んで、ランキングの確かさを確認するだけである。個人的には『13・67』は早めに読んでおきたいところだ。
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Comments
 
KSBC さん

>今年は、自社出版アゲアゲ感が少ない感じがありでした。

データ操作なのか投票者の忖度なのかはわかりませんが(笑)、たまにアレ?というのがありますからね。まあ、最近は比較的落ち着いているような気がします。
 
ポール・ブリッツさん

うわあ、三才ブックスのワースト本とか最悪ですね(笑)。でもあそこが出さなかったら、他に出すとこないなという気も確かにします(苦笑)。
個人的には匿名じゃなく、ぜひ実名でやってもらいたいところですが。
 
ご苦労様です。
毎度興味深い集計ですね。今年は、自社出版アゲアゲ感が少ない感じがありでした。
まあ、面白ければどうでもいいんですけどね。

とはいえ、しばらくは翻訳ものより昭和ものに驀進する感じです。
 
もうここまで同じようなベスト10になるのだったら、「ラジオライフ」の三才ブックスあたりが腹をくくって、「一流のミステリ読みによる完全匿名アンケート」で「このミステリーがつまらん!」を出すべきではないかと。

薄いページで、往年の「覆面座談会」のような悪口のオンパレードで。

投票できる本は、「その年に自分が金を出して買った本」であること。

こういう本だったら喜んで2000円出して買います(笑)

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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