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 「クリスマスにはクリスティを」というわけでもないのだが、本日は四十三年ぶりに再映画化されたアガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』の感想を。

 オリエント急行殺人事件

 クリスティの代表作として非常に有名な作品ではあるが、中身はほぼ聴き取り捜査に終始し、実はストーリーとしてはいたって地味な作りの本作。それでもどこかワクワクしてしまうのは、寝台列車オリエント急行という魅力的な舞台装置と、豪華俳優陣によるそろい踏みがあるからだろう。

 本作でも監督にしてポワロを演ずるケネス・ブラナーをはじめ、ジョニー・デップ、ウィレム・デフォー、ジュディ・デンチ、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドル、ジョシュ・ギャッドなどなど、まあよく集めたもんだというラインナップ。
 一人一人の見せ場もそれほど多くないのにこれだけのキャストが出演するのは考えるとすごいことだが、そこは制作サイドも抜かりはなく、まず大御所ジュディ・デンチの出演をとりつけたらしい。言葉は悪いが、彼女がいってみれば撒き餌。ほかのキャストは「彼女が出るならぜひ」ということで決まっていったのだという。

 お話しそのものは説明するまでもないだろう。たまたまポワロが乗車していたオリエント急行内で大富豪ラチェットが全身を十二個所も刺されて殺害されるという事件が起こる。犯人は車内にいる乗客か乗務員の誰かのはず。しかし全員にアリバイがあり……というもの。

 まあ、言わずとしれたクリスティの傑作だから、原作を読んだことがない人であれば文句なしに楽しめるはずだが、問題は原作や以前の映画ですでに結末や真相を知っている人だ。
 その割合は決して低くないと思われるが、ケネス・ブラナーはそんな人たちに対して、オリジナルのシーンや解釈を付け加えることで新味を出そうとしたようだ。それがいくつかのアクションシーンやテーマの掘り下げとなって表れている。

 だが個人的にはここがかなり微妙な感じであった。
 たとえばポアロがおそろしいほど活動的で、その挙げ句に銃弾による傷を負ったりする。はたまた終盤では正義と悪の狭間で苦悩するポワロの姿がクローズアップされる。そのどちらの姿もシリアスすぎていまひとつポワロのイメージに合致しない。
 全般的にはコアなファンはとりあえず脇に置いといて、一般の映画ファンにアピールすべくエンタメ性を向上させたというのが本作の大きな方向性だとは思うが、ううむ、悪くはないのだけれどキャラクターの性質までいじるのはどうなんだろうなぁ。そこそこよく出来ている映画なので、そういう部分がよけいに気になってしまった。

テーマ:サスペンス・ミステリー - ジャンル:映画





ポール・ブリッツさん

テレビシリーズは観ていないので、そちらと比べてどうこうはいえないのですが、ポアロが備えるユーモラスな部分やイメージを壊さずにシリアス展開するの別にいいと思うんです。シドニー・ルメット版はもちろんや三谷幸喜版ですら、そこはキープしていたように思います。
ケネス・ブラナー版のポアロも、実は序盤はいい感じなんですよ。ところがラチェットにボディガードを依頼されるあたりから急にシリアスというか重厚な雰囲気が強くなって、そこからあまりポアロに見えなくなってしまいました。まあ、個人的な印象なので、問題ないという人もいるとは思いますが、個人的にはちょっと違うかなと。
【2017/12/27 00:24】 URL | sugata #-[ 編集]

「苦悩するポワロ」については、テレビシリーズを見て「そういう解釈もあるのか!」とひざを打ちましたが、あれはそれまでのテレビシリーズを長々と見たから感動もするので、単発の映画作品でやられてもなあ、と思います。

でもこれからのポワロはあれと比べられてしまうのか。すると確かに能天気な人情噺エンディングは無理だなあ。

原作を演出でヘタにいじらない鬼平スタッフは優秀でしたね(そういう結論になるのか!?(^^;))
【2017/12/26 20:59】 URL | ポール・ブリッツ #0MyT0dLg[ 編集]















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