- Date: Sat 30 12 2017
- Category: 国内作家 笹沢左保
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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笹沢左保『六本木心中』(角川文庫)
この数年、昭和の推理作家を意識して読んでいるが、今年その魅力を実感できたのは笹沢左保か。特に『招かれざる客』、『霧に溶ける』、『人喰い』あたりの初期長編は、トリックなどにはやや難もあるが本格魂にあふれ、どれも凝ったプロットで非常に楽しめた。
本日の読了本はそんな笹沢左保の短編集『六本木心中』。まずは収録作。
「六本木心中」
「純愛碑」
「向島心中」
「鏡のない部屋」
「銀座心中」

初期の短編集で、いずれの作品も何らかの死や犯罪を扱っており、犯罪小説的な香りは濃厚なのだがミステリとしての興味は薄い。どちらかというと風俗小説や中間小説というほうが適切なのだが、そもそも本作は笹沢左保がそういう方向性に挑戦した作品集だ。
中心に据えられたのは人の死に秘められたさまざまな人間模様。著者自身の女性観や愛憎、人間不信などがいろいろな形で綴られている。初期のミステリ作品を見ても、そういった要素は少なからずあったのだが、本作を読むとむしろこちらのほうが著者の本領ではないかといういう感が強い(いや実際そのとおりなんだろうけれど)。
まあ、それぐらい力作ぞろいの短編集である。
表題作の「六本木心中」は、孤独を募らせる若い男女の六本木での出会いを描く。新興の盛り場として急速に人が集まりだしていた六本木と、主人公たちの抱える寂寥感の対比が印象的。
「純愛碑」は本書中のベスト。女性不信に陥っている男が、愛について考え直すきっかけになった事件とは……。決してミステリではないのだけれど、この皮肉なオチのつけ方によって、何ともいえない読後感を残す。
「向島心中」は、向島で無理心中した売れっ子芸者と新進シャンソン歌手の物語。元同級生の二人はいまや立場が逆転した形で再会したが、それだけでは済まされない因縁があった……。
「鏡のない部屋」は醜女の女性を主人公にした悲惨な物語。現代では考えられないような周囲の言動がさすがに時代を感じさせる。後味も苦くて、これはちょっと好みではないな。
「銀座心中」は銀座のとあるデパートで起こった心中事件を描く。これまたほろ苦い真相が待ち受け、ラストシーンではなんともいえない余韻を残す。
本日の読了本はそんな笹沢左保の短編集『六本木心中』。まずは収録作。
「六本木心中」
「純愛碑」
「向島心中」
「鏡のない部屋」
「銀座心中」

初期の短編集で、いずれの作品も何らかの死や犯罪を扱っており、犯罪小説的な香りは濃厚なのだがミステリとしての興味は薄い。どちらかというと風俗小説や中間小説というほうが適切なのだが、そもそも本作は笹沢左保がそういう方向性に挑戦した作品集だ。
中心に据えられたのは人の死に秘められたさまざまな人間模様。著者自身の女性観や愛憎、人間不信などがいろいろな形で綴られている。初期のミステリ作品を見ても、そういった要素は少なからずあったのだが、本作を読むとむしろこちらのほうが著者の本領ではないかといういう感が強い(いや実際そのとおりなんだろうけれど)。
まあ、それぐらい力作ぞろいの短編集である。
表題作の「六本木心中」は、孤独を募らせる若い男女の六本木での出会いを描く。新興の盛り場として急速に人が集まりだしていた六本木と、主人公たちの抱える寂寥感の対比が印象的。
「純愛碑」は本書中のベスト。女性不信に陥っている男が、愛について考え直すきっかけになった事件とは……。決してミステリではないのだけれど、この皮肉なオチのつけ方によって、何ともいえない読後感を残す。
「向島心中」は、向島で無理心中した売れっ子芸者と新進シャンソン歌手の物語。元同級生の二人はいまや立場が逆転した形で再会したが、それだけでは済まされない因縁があった……。
「鏡のない部屋」は醜女の女性を主人公にした悲惨な物語。現代では考えられないような周囲の言動がさすがに時代を感じさせる。後味も苦くて、これはちょっと好みではないな。
「銀座心中」は銀座のとあるデパートで起こった心中事件を描く。これまたほろ苦い真相が待ち受け、ラストシーンではなんともいえない余韻を残す。
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