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岡田鯱彦『岡田鯱彦名作選 噴火口上の殺人』(河出文庫)
岡田鯱彦を続けてもう一冊。河出文庫の「本格ミステリコレクション」から『岡田鯱彦名作選 噴火口上の殺人』である。収録作は以下のとおり。
「噴火口上の殺人」
「妖鬼の呪言」
「四月馬鹿(エイプリル・フール)の悲劇」
「真実追求家」
「死の湖畔」
「巧弁」
「地獄から来た女」
「死者は語るか」
「石を投げる男」
「情炎」
扶桑社の『薫大将と匂の宮』が時代ミステリなら、こちらはガチガチの本格をまとめた短編集。とはいっても中編並みの長さのものが多く、かなり読み応えのある一冊だ。ただガチガチの本格と書いたが、著者は単なるロジックやトリックのみを求めているわけではないように思える。事件が起こるまでのドラマ、心の機微といったところをしっかりと描き、それがあるからこそ意外な結末がより生きてくるという印象である。
例えば短編での代表作として有名な「噴火口上の殺人」も確かにトリックというようなものはあるけれど、その神髄は学生たちの生活や意識の描写であり、あるいは事件が起こるまでの緊張感にある。岡田鯱彦の短編は長いからこそいい、というようなことをどこかで読んだが、まさに言い得て妙。小説としての膨らみが違うのである。
純粋に探偵小説が好きで執筆に手を染めるようになった著者ではあるが、やはり国文学者としての嗜好などがうまくミックスされた作品ほど、その出来映えはよいようだ。マイ・フェイバリットは「噴火口上の殺人」「四月馬鹿(エイプリル・フール)の悲劇」「真実追求家」「死者は語るか」あたりか。
ところで河出文庫の「本格ミステリコレクション」は第一期全6巻で終了なのだろうか。飛鳥高や楠田匡介、鷲尾三郎などといった、あまりにマニアックなセレクトに刊行当初は狂喜乱舞したものだが、やはり売上げ的には芳しくなかったのか? ぜひ第二期をお願いしたいものである。宮野村子とか新章文子とか女流でまとめるのもいいなぁ。
「噴火口上の殺人」
「妖鬼の呪言」
「四月馬鹿(エイプリル・フール)の悲劇」
「真実追求家」
「死の湖畔」
「巧弁」
「地獄から来た女」
「死者は語るか」
「石を投げる男」
「情炎」
扶桑社の『薫大将と匂の宮』が時代ミステリなら、こちらはガチガチの本格をまとめた短編集。とはいっても中編並みの長さのものが多く、かなり読み応えのある一冊だ。ただガチガチの本格と書いたが、著者は単なるロジックやトリックのみを求めているわけではないように思える。事件が起こるまでのドラマ、心の機微といったところをしっかりと描き、それがあるからこそ意外な結末がより生きてくるという印象である。
例えば短編での代表作として有名な「噴火口上の殺人」も確かにトリックというようなものはあるけれど、その神髄は学生たちの生活や意識の描写であり、あるいは事件が起こるまでの緊張感にある。岡田鯱彦の短編は長いからこそいい、というようなことをどこかで読んだが、まさに言い得て妙。小説としての膨らみが違うのである。
純粋に探偵小説が好きで執筆に手を染めるようになった著者ではあるが、やはり国文学者としての嗜好などがうまくミックスされた作品ほど、その出来映えはよいようだ。マイ・フェイバリットは「噴火口上の殺人」「四月馬鹿(エイプリル・フール)の悲劇」「真実追求家」「死者は語るか」あたりか。
ところで河出文庫の「本格ミステリコレクション」は第一期全6巻で終了なのだろうか。飛鳥高や楠田匡介、鷲尾三郎などといった、あまりにマニアックなセレクトに刊行当初は狂喜乱舞したものだが、やはり売上げ的には芳しくなかったのか? ぜひ第二期をお願いしたいものである。宮野村子とか新章文子とか女流でまとめるのもいいなぁ。
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Comments
Edit
読んでみました。
「四月馬鹿(エイプリル・フール)の悲劇」面白いですね。
このくらい遊べたら四月馬鹿の名称に恥じないですね!
Posted at 01:26 on 02 23, 2011 by semicolon?
semicolon?さん
レスが遅くなってすいません。
『岡田鯱彦名作選 噴火口上の殺人』、楽しんでいただけたようで何よりです。
岡田鯱彦ってよき文系の本格ミステリという感じがして好きなんですよね。まだ読んでいらっしゃらなければ、ぜひ『薫大将と匂の宮』もお試しください。
Posted at 21:39 on 02 24, 2011 by sugata