- Date: Sun 27 05 2018
- Category: 国内作家 平林初之輔
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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平林初之輔『平林初之輔探偵小説選I』(論創ミステリ叢書)
論創ミステリ叢書もぼちぼち読み進めて、七十冊ぐらいは終えているのだが、実は初っ端の1巻と2巻をいまだに読んでいなかった。『平林初之輔探偵小説選』の二冊である。
まあ、大した理由などあるはずもなく、たんに買った本が積ん読の山に埋もれて見つからなかっただけのことなのだが、先日ようやく無事に発掘して読むことができた。実は読破計画を進めているロスマクでも似たような事態が発生していて、全部持っているはずなのだがなかなか次に読むものが発見できない。積ん読の山もそのうち整理しないとなぁ。
そんなわけで本日は『平林初之輔探偵小説選I』の感想など。まずは収録作。
「予審調書」
「頭と足」
「犠牲者」
「秘密」
「山吹町の殺人」
「祭の夜」
「誰が何故彼を殺したか」
「人造人間」
「動物園の一夜」
「仮面の男」
「私はかうして死んだ!」
「オパール色の手紙」
「華やかな罪過」
「或る探訪記者の話」

平林初之輔はプロレタリア文学を中心として活動した戦前の文学者だが、探偵小説にも関わっていたことはマニアにはほぼ知られている事実である。創作よりは評論家としての印象が強いのだけれど、これは平林が当時の探偵小説を評して“健全派”と“不健全派”とに分類したことが大きな原因だろう。日本探偵小説史をなぞるとき、このエピソードがたいてい紹介されるので、評論活動ばかりが印象に残ってしまうのである。
ただ、それこそ本書と続巻を見ればわかるように、実はそこそこ創作も残しているわけで、では“健全派”と“不健全派”という分類をした平林が自身でどういう探偵小説を書いていたのか、そこはかなり気になるところであった。
まあ、不健全派というのは異常心理や変態心理などを扱うといった内容的なところでの分類なので、さすがに今となってはナンセンスなのだが。
で、実際、『平林初之輔探偵小説選I』を通して読んでみたところ、これがなかなか真っ当な探偵小説でちょっと驚いた。
もちろん“健全派”であることは当然として(苦笑)、きちんと探偵小説としての肝を押さえている。といっても今でいう本格探偵小説ほどのものではなく、あくまで広義のそれではあるのだが、作品ごとにきちんとテーマがあり、物語としてちゃんとまとまっているのがいい。
印象に残ったものとしては、まず「予審調書」、「犠牲者」、「人造人間」、「或る探訪記者の話」の四作。どれも決して後味のよい話ではなく、読後にざらっとした何かが心に残るものばかりであり、著者ならではの味ではないだろうか。ちょっと変わったところでは、動機に注目した「誰が何故彼を殺したか」も悪くなかった。
ということで予想以上に楽しめる一冊。なんせもっと酷いレベルも覚悟していたので、これぐらいやってくれれば十分である。安心して『平林初之輔探偵小説選II』に入るとしよう。
まあ、大した理由などあるはずもなく、たんに買った本が積ん読の山に埋もれて見つからなかっただけのことなのだが、先日ようやく無事に発掘して読むことができた。実は読破計画を進めているロスマクでも似たような事態が発生していて、全部持っているはずなのだがなかなか次に読むものが発見できない。積ん読の山もそのうち整理しないとなぁ。
そんなわけで本日は『平林初之輔探偵小説選I』の感想など。まずは収録作。
「予審調書」
「頭と足」
「犠牲者」
「秘密」
「山吹町の殺人」
「祭の夜」
「誰が何故彼を殺したか」
「人造人間」
「動物園の一夜」
「仮面の男」
「私はかうして死んだ!」
「オパール色の手紙」
「華やかな罪過」
「或る探訪記者の話」

平林初之輔はプロレタリア文学を中心として活動した戦前の文学者だが、探偵小説にも関わっていたことはマニアにはほぼ知られている事実である。創作よりは評論家としての印象が強いのだけれど、これは平林が当時の探偵小説を評して“健全派”と“不健全派”とに分類したことが大きな原因だろう。日本探偵小説史をなぞるとき、このエピソードがたいてい紹介されるので、評論活動ばかりが印象に残ってしまうのである。
ただ、それこそ本書と続巻を見ればわかるように、実はそこそこ創作も残しているわけで、では“健全派”と“不健全派”という分類をした平林が自身でどういう探偵小説を書いていたのか、そこはかなり気になるところであった。
まあ、不健全派というのは異常心理や変態心理などを扱うといった内容的なところでの分類なので、さすがに今となってはナンセンスなのだが。
で、実際、『平林初之輔探偵小説選I』を通して読んでみたところ、これがなかなか真っ当な探偵小説でちょっと驚いた。
もちろん“健全派”であることは当然として(苦笑)、きちんと探偵小説としての肝を押さえている。といっても今でいう本格探偵小説ほどのものではなく、あくまで広義のそれではあるのだが、作品ごとにきちんとテーマがあり、物語としてちゃんとまとまっているのがいい。
印象に残ったものとしては、まず「予審調書」、「犠牲者」、「人造人間」、「或る探訪記者の話」の四作。どれも決して後味のよい話ではなく、読後にざらっとした何かが心に残るものばかりであり、著者ならではの味ではないだろうか。ちょっと変わったところでは、動機に注目した「誰が何故彼を殺したか」も悪くなかった。
ということで予想以上に楽しめる一冊。なんせもっと酷いレベルも覚悟していたので、これぐらいやってくれれば十分である。安心して『平林初之輔探偵小説選II』に入るとしよう。
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