- Date: Sat 08 09 2018
- Category: 海外作家 ロード(ジョン)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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マイルズ・バートン『素性を明かさぬ死』(論創海外ミステリ)
マイルズ・バートンの『素性を明かさぬ死』を読む。先日読んだ『代診医の死』の著者、ジョン・ロードの別名義作品である。まずはストーリー。
英国の片田舎、テンタリッジ村で別荘を構え、農園を楽しむために週末を過ごすジェフリー・メープルウッド。あるとき地主でもある甥のバジルが訪ねてきたが、翌朝、バジルは密室状態のバスルームで死亡したところを発見される。
事故、自殺、それとも他殺? 判別がつかないため、事件はロンドン警視庁のアーノルド警部に委ねられる。捜査を進めるアーノルドは遺産などの状況から犯人の目処はつきつつも、どのような犯行手段を使ったかがわからず……。

別名義とはいえ、シリーズ探偵がプリーストリー博士から犯罪研究家メリオン氏&アーノルド警部に変わったぐらいで、その作風はほぼ同一と思ってよいだろう。十分に練られたプロット、推理合戦を中心にししつつも展開としてはいたって地味なストーリー、紋切り型の登場人物、ハウダニットにこだわってはいるが感動を与えない機械的トリック……認識としてはそんなところか。
加えてバートン名義の方が田舎の情景描写などがより光っており、トラベルミステリ的な楽しみもできるという見方もあるようだが、まあ、ジョン・ロードを今頃読む人がその点を期待しているとはさすがに思えないけれど(苦笑)。
ただ、一応は長所短所が入り混じっているとはいえ、これまでは圧倒的に短所の印象が強く、退屈派とまで揶揄されたジョン・ロード。それが昨年の夏に刊行された『代診医の死』の紹介によって、ずいぶんと我が国での株も上がったことは間違いないだろう。
そして、そこからあまり間をおかずに出版されたバートン名義の『素性を明かさぬ死』だが、これもさらにロードの株をあげるに十分な一冊であった。
先にも書いたが、これまでのロード作品とそれほど作風が変わるわけではない。特にストーリーを引っ張るのがハウダニット、すなわち機械的な密室トリックであり、その仕掛けもまあ悪くはないけれど凄くもないというレベル。それをアーノルド警部がコツコツと調べていく過程はまずまず楽しめるけれども、それだけではもちろん満足するわけにはいかない。
本作が光っているのは、その機械的密室トリックをとりまく状況であり、著者は自らの短所を逆手に取るかのような真相をもってくる。あまり詳しく書くとネタバレになるけれど、密室トリックそれ自体も大きな伏線なのである。
ごく限られた条件と登場人物、そのなかで本格を成立させるのはもちろん難しいのだが、それをロードがこういうサプライズでまとめてくるとはまったく予想外であった。
これらの作品でジョン・ロードの作品が見直され、続々と刊行されるようになると面白いのだけれど、問題はこのレベルの作品があといくつ残っているかだろうなぁ。
英国の片田舎、テンタリッジ村で別荘を構え、農園を楽しむために週末を過ごすジェフリー・メープルウッド。あるとき地主でもある甥のバジルが訪ねてきたが、翌朝、バジルは密室状態のバスルームで死亡したところを発見される。
事故、自殺、それとも他殺? 判別がつかないため、事件はロンドン警視庁のアーノルド警部に委ねられる。捜査を進めるアーノルドは遺産などの状況から犯人の目処はつきつつも、どのような犯行手段を使ったかがわからず……。

別名義とはいえ、シリーズ探偵がプリーストリー博士から犯罪研究家メリオン氏&アーノルド警部に変わったぐらいで、その作風はほぼ同一と思ってよいだろう。十分に練られたプロット、推理合戦を中心にししつつも展開としてはいたって地味なストーリー、紋切り型の登場人物、ハウダニットにこだわってはいるが感動を与えない機械的トリック……認識としてはそんなところか。
加えてバートン名義の方が田舎の情景描写などがより光っており、トラベルミステリ的な楽しみもできるという見方もあるようだが、まあ、ジョン・ロードを今頃読む人がその点を期待しているとはさすがに思えないけれど(苦笑)。
ただ、一応は長所短所が入り混じっているとはいえ、これまでは圧倒的に短所の印象が強く、退屈派とまで揶揄されたジョン・ロード。それが昨年の夏に刊行された『代診医の死』の紹介によって、ずいぶんと我が国での株も上がったことは間違いないだろう。
そして、そこからあまり間をおかずに出版されたバートン名義の『素性を明かさぬ死』だが、これもさらにロードの株をあげるに十分な一冊であった。
先にも書いたが、これまでのロード作品とそれほど作風が変わるわけではない。特にストーリーを引っ張るのがハウダニット、すなわち機械的な密室トリックであり、その仕掛けもまあ悪くはないけれど凄くもないというレベル。それをアーノルド警部がコツコツと調べていく過程はまずまず楽しめるけれども、それだけではもちろん満足するわけにはいかない。
本作が光っているのは、その機械的密室トリックをとりまく状況であり、著者は自らの短所を逆手に取るかのような真相をもってくる。あまり詳しく書くとネタバレになるけれど、密室トリックそれ自体も大きな伏線なのである。
ごく限られた条件と登場人物、そのなかで本格を成立させるのはもちろん難しいのだが、それをロードがこういうサプライズでまとめてくるとはまったく予想外であった。
これらの作品でジョン・ロードの作品が見直され、続々と刊行されるようになると面白いのだけれど、問題はこのレベルの作品があといくつ残っているかだろうなぁ。
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