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 ちょっと間が空いてしまったが、久々にロスマク読破計画を一歩進める。本日の読了本はロス・マクドナルドの『運命』。著者の長編第十二作目、リュウ・アーチャーものとしては七作目にあたる。

 こんな話。私立探偵リュウ・アーチャーの事務所を早朝訪れた青年は、ひどくおかしな様子であった。ちょっと奇妙な衣服、怯えたような立ち振る舞い……。精神病院から脱走してきたカールと名乗るその青年は、兄や医者の陰謀だと訴え、さらには最近死亡した父の死因も疑わしいと話す。
 アーチャーは心動かされながらも、その言動の危うさからまずは病院へ帰るべきだと説得し、カールを車で送っていくことになった。しかし病院の近くまで来たとき、アーチャーは急にカールに襲われ、拳銃と車を奪われてしまう……。

 運命

 前期の典型的なB級ハードボイルドの世界から、後期の心理学なども入れ込んだ深みのあるハードボイルドへの架け橋となる時期の作品。両者のいいとこどりとはいかないまでも、わずか1日ほどの事件を濃密に描いていることも印象的で、著者の作品の中でも忘れがたい一作と言えるだろう。

 顕著なのはやはり“家族の悲劇”という部分。後期作品にはおなじみのテーマだが、そのほかの時期でもたびたび扱われ、本作でもまた大きなテーマとなっている。アーチャーは積極的に事件に関わってはいくけれども、ストーリーラインの中心にあるのは常にカールであり、カールの家族である。カールの妻ミルドレッドとその家族も含め、アーチャーの前に立つ人々は誰もが強烈な個性をもち(というか全員なにかしら病んでいるような連中ばかり)、ぶつかりあう。もはやアーチャーの意思とは関係なく、カタストロフィに向かって転がってゆく。
 ストーリーが整頓しきれていないというか、とりわけ中盤以降はグダグダした感じにはなってしまうが、そういう欠点すらこの混沌とした物語にはちょうど合っているのかもしれない。
 そして、それを締める事件の真相は、ラストの犯人の長い告白となって示される。これを受けてのアーチャーの内省も切なく、余韻もまたよし。

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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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