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 今年は江戸川乱歩に関する本をけっこう読んだ。年の始めに新潮社〈とんぼの本〉から『怪人 江戸川乱歩のコレクション』というビジュアル本。続いて昨年から読み続けていた集英社文庫の「明智小五郎事件簿」を春頃にようやく片付け、その勢いで戦後の明智登場作品『化人幻戯』『影男』を読了。そして後半は評論系が中心で、内田隆三『乱歩と正史 人はなぜ死の夢を見るのか』、中川右介『江戸川乱歩と横溝正史』、中相作『乱歩謎解きクロニクル』という三冊。
 『怪人 江戸川乱歩のコレクション』こそいまひとつだったけれど、そのほかの評論系はそれぞれ異なるアプローチでどれも面白く読めた。

 本日の読了本は、そんな乱歩関連本の大トリとなる『明智小五郎回顧談』。
 ちょうど一年前の今頃に出た本なので何を今更の一冊だが、これがなかなか面白い趣向である。すなわち乱歩の生んだ名探偵・明智小五郎に自伝的な一冊。明智が自分の生い立ちから、小説で語られなかった空白の期間の活動、そして知られざる人間関係を自ら語っていくというもの。

 明智小五郎回顧談

 著者はシャーロキアンであり、乱歩研究家であり、加えてクラシックミステリの翻訳なども手がけている平山雄一氏である。シャーロキアンのアプローチを明智小五郎研究にも応用した、いわばマニアの究極のお遊びという一冊なのだが、これがまあ、ここまでやるかという出来栄え。

 スタイルとしては一応、小説である。「警察庁史」を編纂している箕浦元刑事から明智がインタビューを受けるという形で進むのだが、もちろん乱歩の書いた事実だけでなく、そこには著者の平山氏が原典から推測したこと、想像したことも含まれる。さらには時代的背景を踏まえて当時の事実や実在の著名人を絡めるお遊びも含め、架空の明智伝記を構成している。
 管理人は正直なところ、パスティーシュや二次創作の類は好きではないのだけれど、ここまで原作のみならず当時の史実なども調べていると、さすがにこれはまいったというしかない。小説という形をとってはいるがこれは歴とした評論というべきだろう。とはいえ、ガチの評論では不可能な、単なる「こうだったら楽しい」という部分も盛り込んであるのがこのスタイルの大きな利点である。

 とにかくさまざまなネタを仕込んでいる本書だが、個人的に一番面白かったのは、お勢の件である。ホームズや二十面相あたりはまだネタとして想定の範囲内だったが、お勢をこういうふうに捉えるのはさすがに予想できなかった(笑)。
 ただ、ここまでいろいろ膨らませると、読者みなそれぞれの明智たちのイメージがあるだけに好き嫌いは出てくるかな。

 「明智小五郎回顧談」の謎

 なお、小説のスタイルをとっているとはいえ、根っこはシャーロキアン的なアプローチであるだけに、やはり元ネタの解説は必要かなと思っていたのだが(すべて気がつくのはさすがに無理だと思うし)、後日『「明智小五郎回顧談」の謎』という解説本も刊行されて、これは非常にありがたかった。
 今から『明智小五郎回顧談』を読もうかと思っている人は、ぜひ『「明智小五郎回顧談」の謎』もセットで買っておくことをオススメする。ただ、こちらは私家版なので、通常の新刊書店では購入できないので念のため。今だったらこちらでどうぞ


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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