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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

横田順彌『快絶壮遊[天狗倶楽部]明治バンカラ交友録』(ハヤカワ文庫)

 横田順彌お得意の明治ものノンフィクションから『快絶壮遊[天狗倶楽部]明治バンカラ交友録』を読む。
 日本SF小説の祖とされる押川春浪は、明治時代の大人気作家であり、雑誌『冒険世界』や『武侠世界』などの主筆も務めた人物である。しかし、彼の活躍は文学にとどまらず、スポーツや芸術の多岐にわたっており、日本に野球や相撲、テニスなどをスポーツとして定着させたスポーツ社交団体[天狗倶楽部]を主宰したことでも知られている。
 本書は、その天狗倶楽部に関係した魅力的な面々を紹介したノンフィクション。元は教育出版から〈江戸東京ライブラリー〉の一冊として1999年に刊行されたものだが、現在NHKで放映されている大河ドラマ『いだてん』で天狗倶楽部の面々が多数登場しているため、そのタイミングで文庫化が企画されたのだろう。

 快絶壮遊[天狗倶楽部]明治バンカラ交友録

 とにかく情報量がすごい。管理人は特に『いだてん』云々には興味がなく、単純に押川春浪をはじめとする明治の文人ネタ目当てで読んだわけだが、そんな情報はごく一部で、当時のバンカラたちの無双っぷりが次から次へと紹介される。文学界やスポーツ界だけでなく、ときには政界や財界の人間までもが登場し、まあとても史実とは思えないぐらいのハチャメチャぶりだ。そもそも一般的な歴史の本には出てこないような内容ばかりなので、こういう形に残してくれた意義も大きいといえる。
 明治というのは日本史上でも類を見ない新しい時代の始まりであり、新しい文化もどんどん花開いていったわけだが、そういう時代が彼らを育てたのか、それとも逆にこういう人物がいたからこそ明治という時代が栄えたのか。この辺はもう少し勉強しておきたいところである。

 関連書といえば、本書はエピソードの寄せ集めみたいな造りではあるのだが、そこから興味をもった各種テーマに進むのがいいというのは、解説で北原尚彦氏も書いているとおり。まさにそういう楽しみ方ができる、ある意味明治ガイドブックでもあるのだ。図版も多く、各章の頭に挿入される人物相関図もたいへん便利だし、これはなかなかお買い得の一冊であった。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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