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ロバート・B・パーカー『悪党』(ハヤカワ文庫)
ロバート・B・パーカーの『悪党』を読む。
今回スペンサーが依頼された仕事は、一年半前に起こった白人女子大生殺害事件の再捜査だった。犯人の黒人少年は既に逮捕されているが、当時は十分な弁護ができなかったと感じた弁護士が、スペンサーの助力を求めてきたのだ。スペンサーは被害者の肉親や事件関係者らから聞き込みを始めるが、被害者のボーイフレンドやその両親の釈然としない態度に疑念を抱き始める。同時にスペンサーは何者かから、事件から手を引くよう脅迫され、ついには狙撃によって重傷を負ってしまう……。
真っ当な、あまりにも真っ当なストーリー展開にちょっと驚いてしまった。殺人犯の濡れ衣をはらすという捜査の依頼。嘘をつく関係者たち。高慢な金持ち。捜査への圧力。それをはねつけ、結局は銃弾に倒れる主人公。そして再生と復讐、勝利。
うろ覚えの知識を承知で書くと、これらの一つひとつの要素は、民俗学でいう民話の構造に見事なまでに沿ったものであり、いかにパーカーがスペンサー・シリーズを現代の寓話的存在として成り立たせようとしているかの証ではないだろうか。本書『悪党』ばかりではなく、『初秋』などの過去の代表作もまた似たようなものである。だからこそ多くのファンを安心させ、読み続けさせる力を備えているといえるだろう。スペンサー・シリーズがマンネリだというのは以前からよく言われていることだし、自分でもそう思っていたのだが、もしかするともっと違う見方をすべきではないだろうか。ふとそんなことを思ってしまった。前作『チャンス』が少々もたついた作品だったので、よけいにそう感じたのかもしれないが。
今回スペンサーが依頼された仕事は、一年半前に起こった白人女子大生殺害事件の再捜査だった。犯人の黒人少年は既に逮捕されているが、当時は十分な弁護ができなかったと感じた弁護士が、スペンサーの助力を求めてきたのだ。スペンサーは被害者の肉親や事件関係者らから聞き込みを始めるが、被害者のボーイフレンドやその両親の釈然としない態度に疑念を抱き始める。同時にスペンサーは何者かから、事件から手を引くよう脅迫され、ついには狙撃によって重傷を負ってしまう……。
真っ当な、あまりにも真っ当なストーリー展開にちょっと驚いてしまった。殺人犯の濡れ衣をはらすという捜査の依頼。嘘をつく関係者たち。高慢な金持ち。捜査への圧力。それをはねつけ、結局は銃弾に倒れる主人公。そして再生と復讐、勝利。
うろ覚えの知識を承知で書くと、これらの一つひとつの要素は、民俗学でいう民話の構造に見事なまでに沿ったものであり、いかにパーカーがスペンサー・シリーズを現代の寓話的存在として成り立たせようとしているかの証ではないだろうか。本書『悪党』ばかりではなく、『初秋』などの過去の代表作もまた似たようなものである。だからこそ多くのファンを安心させ、読み続けさせる力を備えているといえるだろう。スペンサー・シリーズがマンネリだというのは以前からよく言われていることだし、自分でもそう思っていたのだが、もしかするともっと違う見方をすべきではないだろうか。ふとそんなことを思ってしまった。前作『チャンス』が少々もたついた作品だったので、よけいにそう感じたのかもしれないが。
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